死後事務費用の支払方法

死後事務委任契約の受任者として、実際に死後事務を執行する際に、費用が発生することがあります。例えば、葬儀・納骨費用、住居引渡費用、治療費・入院費などです。受任者は、これらの費用をどのように支払うことになるのでしょうか。

死後事務費用の支払いについて死後事務委任契約に定めがない場合は、民法の規定を根拠に、前払いで支払いを受けることも、受任者が費用を立て替えて後日精算することもできます。ただ、生前に費用を預かっておかないと、精算まで時間がかかることが予想されます。また、受任者に費用を立て替えるのに十分な財産がないと、費用不足で死後事務の執行ができないおそれがあります。そこで、実務上は、受任者が前払いで預かることが多いでしょう。その場合には、死後事務費用の支払根拠だけでなく、預り金の精算方法や残った預り金の返金先についても契約の中で定めた方がよいでしょう。

本人の生前に費用の前払いを受ける場合は、死後事務の執行費用を確実に確保することができます。また、受任者の費用不足による執行不能のリスクも回避できます。他方で、本人としては、受任者による預り金の使い込みや破産した場合に預り金が返金されないリスクを負います。このようなリスクを回避するため、受任者は自己の固有財産と分離して管理を行うべきです。

また、このようなリスクがあることから、預り金が過大な金額とならないようにすべきです。しかし、預り金の額を超えて費用が発生した場合、受任者は不足した費用を相続人に請求することになりますが、相続人が素直に支払いに応じない可能性があります。そうなってしまうと、費用不足を理由に契約が中途解約され、本人のすべての希望を実現することができなくなります。そこで、可能な範囲で死後事務費用の見積もりをして、見積額を根拠に預り金の額を定めるように努めたうえで、余裕をもった金額を預かっておく方がよいでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)