遺留分侵害額に関する一般的な取り扱いは、共同相続人相互間の侵害額についても適用されます。しかし、遺留分権利者である共同相続人に対してなされた遺贈や贈与の場合にあっては、その価額から当該共同相続人の遺留分額を控除した額を限度として、遺留分侵害額を負担します。これは、このようにしないと、遺留分侵害額の支払請求をした遺留分権利者は遺留分額の財産を取得できるのに、その請求に応じて支払いを負担した遺留分権利者は遺留分額以下の利益しか得られないことになって妥当ではないからです。
例えば、被相続人Xの遺産が8,000万円、相続人が子A・B・C・Dで、Aに5,000万円、Bに2,000万円、Cに1,000万円の遺贈がなされ、Dには何も残されていない場合、A・B・Cの負担額は次のようになります。A・B・C・Dの遺留分額は、8,000万円×1/2×1/4=1,000万円(Dは1,000万円の遺留分侵害を受けていることになります。)。A・B・Cの遺留分超過額は、A:5,000万円-1,000万円=4,000万円、B:2,000万円-1,000万円=1,000万円、C:1,000万円-1,000万円=0円となります。A・Bの負担額は、遺留分超過額の割合で負担します。共同相続人の公平のためです。したがって、A:1,000万円×4,000万円/5,000万円=800万円、B:1,000万円×1,000万円/5,000万円=200万円となります。以上により、Dは、Aに対して800万円、Bに対して200万円の遺留分侵害額の支払請求をすることができます。
共同相続に特殊な遺留分侵害としては、相続分の指定、遺産分割方法の指定があります。これらの場合における指定を受けた相続人も、遺留分侵害額の負担をしなければなりません。したがって、遺留分を侵害する相続分の指定や遺産分割方法の指定を内容とする遺言も有効であるが、遺留分侵害額の支払請求の対象となり得ることになります。
(司法書士・行政書士 三田佳央)