破産手続は、債務者の財産を処分することにより金銭化して、その金銭を債権者に配当する手続です。このように、破産手続とは、裁判所が関与する倒産手続の中核をなすものであり、清算型倒産処理手続の原則的な形態です。ただ、多重債務者の破産については、実際に配当すべき財産がほとんどなく、債権者への配当に至ることは稀です。多重債務者において破産手続が行われる主たる目的は、免責を得ることにあります。免責とは、その決定が確定することにより、債権者に対する債務の責任を免れることができる制度のことです。この点において、多重債務者の破産は実際には債務者の経済的再生を主な目的とした手続であるといえます。債務者が自ら破産手続の申立てをすることを自己破産といいます。
破産手続をするには、まず、管轄の地方裁判所に破産手続開始の申立てをします。申立てを受けた裁判所が破産手続開始の決定をすれば、破産手続が始まります。その後、通常は、裁判所によって破産管財人が選任されます。この場合を管財事件といいます。ただし、債務者に破産手続の費用を賄うだけの財産がない場合は、裁判所によって破産手続の廃止の決定がなされます。これを廃止事件といいます。この廃止決定は、破産手続開始の決定と同時になされることが多いです。これを同時廃止といいます。多重債務者の破産では、同時廃止の決定がなされ、その後、免責手続に移行します。同時廃止の場合には、破産管財人は選任されません。免責決定が確定すると、破産手続は終了なります。
このように、自己破産の多くは、破産管財人が選任されず、財産を処分して金銭化し、債権者に配当するという手続を経ることがありません。そのため、低廉で迅速に手続が終了することがあります。
(司法書士・行政書士 三田佳央)