特定調停の流れ

特定調停が行われるのは、特定債務者が調停を申し立てる際に特定調停による調停を求めた場合に限られます。客観的に見れば特定債務者による調停の申立てであっても、特定調停による調停を求める申出がないときは、通常の民事調停手続として扱われてしまいます。

特定調停を求める申立人は、申立てと同時に、財産状況の明細書や関係権利者の一覧表、職業・収入の状況に関する陳述書等を提出することになります。これによって、申立人をした債務者が特定債務者であることが確認されます。ただし、申立人が特定債務者に該当しないと認められたときは、特定調停をしないものとされます。

裁判所は、調停委員会において特定調停を行います。通常の民事調停と異なり、調停委員会を組織する調停委員には、「事案の性質に応じて必要な法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等に関する専門的な知識経験を有する者」を指定するものとされています。これは、特定調停が、債務者が倒産状態に近い状況で適切・公平な合意を取りまとめるためには、専門的な知見を有しており、関係者の信頼を得られるような手続実施者の関与が不可欠であると考えられているからです。

調停において当事者間に合意が成立し、その内容を調書に記載されると、調停が成立します。ただ、特定調停においては、調停条項は「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のもの」でなければなりません。そのような内容の合意が成立する見込みがないか、成立した合意がそのような内容と認められない場合には、調停委員会は調停不成立として事件を終了することができます。具体的には、調停条項は、実質的に見て債権者を平等に取り扱い、債務者の経済的再生の見込みがあるものでなければならないと考えられています。

なお、当事者間で合意に至ることができなかった場合でも、一定の条件のもとにその決定を裁判上の和解と同視する、調停に代わる決定の制度があります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)