特定調停とは

特定調停とは、特定債務者の経済的再生のため、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することを目的とする、民事調停法の特則としての手続です。特定債務者とは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれがあるものなどをいいます。支払不能とは、債務者が、支払能力を欠くために、弁済期にある債務につき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます。実際に支払不能に陥っていなくても、そのおそれがあれば特定債務者に該当します。

特定調停手続の特徴としては、①事件の一括処理を可能とする制度があること、②手続中の個別執行を停止する制度があること、③完全合意型の手続であること、④裁判所の一定の関与が前提とされていること、⑤簡易・迅速・廉価に処理できること、があげられます。

①については、特定調停は実質的には倒産処理手続であることから、事件処理の効率性や債権者間の平等の要請から本来集団的な処理が必要となります、しかし、調停という個別手続の形を借りているため、特定調停は個別手続の原則を維持しながら、集団的処理が可能となるように手続的な配慮がなされています。

②については、債権者平等・資産価値の維持・債務者の経済的再生のため、個別の強制執行手続を停止させる制度が設けられています。

③については、個人再生や破産手続と異なり、調停が成立するためには、債権者全員の同意が必要とされています。

④については、裁判所が一定の関与をすることによって、手続の透明性や債権者間の公平性の確保に一定の期待ができるといえます。また、裁判所の関与による事実上の影響力により、任意整理では成立しないような合意ができる可能性もあります。

⑤特定調停では、手続機関が存在しないことから、簡易・迅速・廉価といった利点を徹底的に貫くことができるといわれています。これにより、裁判所の関与により最低限の透明性や公平性を確保しながら、簡易・迅速・廉価という効率性を追求する特定調停は、まだ傷の浅い債務者にとっての事前処理的な倒産処理手続として機能していくことが大いに期待されています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)