特定の者と取引をした場合にその特定の者に、成年後見人、保佐人、補助人が付されていると、その取引が取り消されるおそれがあります。その取引が、日用品の購入その他日常生活に関する行為であれば、取消権の行使の対象から除外されているので、このような取引をする場合には、取消権の行使の可能性を懸念する必要はありません。例えば、食料品や衣料品等の日用品の購入、電気代・ガス代・水道料金等の支払いなどです。
日常生活に関する範囲を超える取引において、本人の判断能力に疑義がある場合に、相手方が本人や成年後見人等の取消権の有無を確認する方法が問題となります。確実な方法としては、本人やその家族に対し、登記事項証明書の提出を求める方法です。しかし、この場合に、本人が成年後見制度を利用していない旨を述べたときは、実際には後見等の審判を受けていたとしても、行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたとして、取消権の行使を免れることができます。
(司法書士・行政書士 三田佳央)