成年後見制度の利用を検討する場合として、「親なき後問題」があります。「親なき後問題」とは、知的障害者や精神障害者を子に持つ親が、現在のところ、その子の財産管理や監護教育をしているが、将来その親の死後や判断能力・身体能力が低下したときに、その子の財産管理などを誰が行うかという問題です。
このようなケースでは、知的障害や精神障害を持つ子の判断能力が低下していれば、その子に成年後見人を付けることが考えられます。親としては、自分が元気なうちは自分で子の面倒を見ていきたいという思いが強いでしょうから、親自身がその子の成年後見人になることが、その想いに適うと言えるでしょう。
ただ、成年後見人に誰を選任するかは家庭裁判所が決定することなので、その思惑と違って第三者が成年後見人になることがあります。このような場合では、弁護士や司法書士などの専門職が成年後見人に選任されることが少なくありません。第三者が成年後見人に選任された場合には、親の死後も引き続き子の財産管理など行うことができますので、その点においては、子の利益に適うと言えるでしょう。
子が身体障害者であるなど判断能力が低下していない場合には、任意後見制度を利用することが考えられます。任意後見制度とは、本人が判断能力を有するときに、将来認知症などで判断能力が低下したときに、信頼できる人に対して財産管理などを行う代理権を与える契約です。
このようなケースで任意後見制度を利用すれば、子は自分の判断能力が低下したときに、信頼できる人に財産管理などを任せることができるため、その子の利益を守ることができます。
「親なき後問題」で成年後見制度を利用する場合には、その親子の状況によって利用できる制度が異なるだけでなく、それぞれの制度を利用する上でのメリット・デメリットがあります。そのため、このようなケースで成年後見制度の利用を検討される際には、ます弁護士や司法書士などの専門家に相談されると良いでしょう。