成年後見制度を利用するきっかけ5

「老老介護」の場合にも成年後見制度の利用が考えられます。「老老介護」とは、高齢になった夫婦や親子の一方が他方の介護をしていることです。ただでさえ、慣れていない人が介護をすると、身体的な負担はもとより精神的な負担が大きく、仕事を制限したり日常生活に支障をきたしたりなど、その影響は決して小さくありません。「老老介護」では、高齢者が介護をしているため、心身ともに過度な負担を強いられていることが問題となります。夫婦の一方が他方を介護をしていたが、精神的に疲れ切ってしまい、相手を殺害してしまうという事件に発展してしまうことが現実に起きています。

また、認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」では、その問題はより深刻なものになっていると言えます。「認認介護」の場合では特に成年後見制度の利用が考えられます。

「認認介護」の場合や、「老老介護」で一方が認知症等により判断能力が低下している場合に、成年後見制度を利用すると、介護していた人に代わって本人の財産管理をしたり、訪問介護(ヘルパー)など必要なサービスを利用する手続きをしたりして本人の日常生活を支援しますので、介護による負担は大幅に減らすことができると考えられます。

特に「認認介護」のケースでは、成年後見人が担当のケアマネージャーなどと連携しながら、ときには施設入所を勧めるなど、その二人にとって安心して暮らる環境を整える支援をすることができます。このようなケースで成年後見制度を利用することによって、その夫婦や親子の日常生活を守ることが可能となります。

夫婦や親子に介護が必要となったときに、家族だから介護したい、しなければならない、と考えておられるかもしれません。そう思われることは自然なことでありとても大切なことだと思いますが、現在では介護保険制度や成年後見制度などが整備されており、家族に介護が必要となったときに利用できるサービスがたくさんあります。このような制度やサービスを利用することによって、家族の介護を続けて精神的に追い詰められることなく、家族の日常生活を守りながら、自分自身にゆとりを持つことができるようになるのではないでしょうか。