占有権1(占有権とは)

(1) 占有権とは何か

自己のためにする意思をもって物を所持することを占有といいます。この占有が認められることにより占有権が取得され、その占有権から各種の効力が認められるという構造になっています。

(2) 占有権の効力

占有権の効力には、次のようなものがあります。

 ① 本権の推定

占有者が占有物について行使する権利は、適法なものと推定されます。これは、現実の支配という事実状態に基づいて、所有権などの本権の立証を容易にするために認められた効果です。この効力は「悪魔の証明」と呼ばれる本権の存在証明を助けるものです。したがって、ある物をせっびゅうしている人に対してその物の返還を請求する場合は、相手方である占有者に本権がないことを証明する必要があるのです。

 ② 物権的請求権の相手方となったときの調整既定の適用

占有の効果の一つとして、物権的請求権の相手方になるという、占有者に不利なものがあります。このときの利益調整の規定が置かれています。

 ③ 即時取得等

取引安全のために占有の外観を信頼した人を保護する制度です。

 ④ 占有訴権

物権的請求権に相当するものです。奪われた物を取り返したり妨害を排除したりできます。

 ⑤ 取得時効に関連する規定の適用

(3) 占有権の要件

占有権の要件は、①所持、②自己のためにする意思です。

 ① 所持

所持とは、物理的にある物を支配することをいいます。しかし、その物を手に持っている場合だけでなく、机の上に置いてある場合や、建物に現に居住していなくても施錠して鍵を保管している場合も、所持があるとされます。また、施錠されていない建物について、隣家に住んで常に出入口を監視して他人の侵入を容易に制止することができる状況にしていた建物所有者に、所持を認めた最高裁の判例があります。このように、所持とは、単なる事実的支配だけでなく、評価を含んだ概念であり、占有の各効果を認めるべき程度に事実上の支配があるかどうかで判断されます。

 ② 自己のためにする意思(専有意思)

自己のためにする意思(占有意思)とは、物の所持によって事実上の利益を受けようとする意思をいいます。

この意思は、現実に存在する必要はなく、一般的・潜在的に存在すれば足ります。そして、この意思が一般的・潜在的に存在するかどうかは、物の所持を生じさせた原因の性質から客観的に判断するものとされています。例えば、売買・賃貸借・寄託などに基づく物の所持は、自己のためにする意思があるものとされます。これは、これらの契約は、買主・賃貸人・受寄者が物の管理・利用・処分をするためのものだからです。また、物を盗んだり無断借用したりして所持する者にも、この意思が認められます。これは、盗みや無断借用は、物を利用したり処分したりするために行われるものだからです。

このように、占有とはものを直接に支配している状態に限られず、観念的なものを含んでいることが分かります。そうすると、現実に物を引き渡すことなく占有が移転するということも可能となります。

(4) 代理占有

 ① 意義

占有権は、代理人によって取得することができます。例えば、アパートの賃貸借契約においては、賃貸人自身も賃借人に貸している部屋の占有を有することができます。このときの賃貸人の占有を代理占有といいます。そして、賃借人を占有代理人といいます。代理占有の意義は、本人(賃貸人など)にも占有者としての保護を与える点にあります。

 ② 効果

代理占有がされている場合には、本人も占有代理人も占有に基づく権利を有し、義務を負います。例えば、両者ともに占有の訴えを提起することができるし、他人の不動産を不法占拠している場合には明け渡しの義務を負います。

 ③ 要件

代理占有が認められる要件は、①占有代理人の所持、②占有代理人と本人との間に代理占有を基礎づける関係(これを占有代理関係といいます)が存在することです。

占有代理関係は、占有代理人と本人との間に、前者がその物を後者にいずれ返還するものとして占有することになる原因がある場合に認められます。例えば、物の賃貸者や使用貸借などの契約が、この原因にあたります。また、物の所有権移転を生じさせる契約(例えば、売買や贈与などです)の無効・取消し・解除も、この原因にあたります。

このような原因がある場合には、本人は返還を前提として他人(占有代理人)に所持させるのであるから、その他人を介して物を支配するものとみることができるのです。そのため、占有代理人だけでなく、本人にも占有が認められます。

 ④ 占有補助者(占有機関)

本人が他人に物を所持させている場合に、代理占有と異なり、本人だけに占有が認められ、物を所持する他人に占有が認められないことがあります。この場合の他人を占有補助者(占有機関)といいます。例えば、建物賃借人の配偶者や子などのことです。この場合には、占有に基づく効力は、本人のみに生じ、占有補助者には生じません。これは、占有補助者には独立の所持がないからです。

(参照条文)民法180条、188条、181条

(参考判例)最判昭和27年2月19日民集6巻2号95頁

(参考文献)内田貴「民法Ⅰ(第4版)総則・物権総論」(東京大学出版会、2008年)405頁以下

佐久間毅「民法の基礎2物権(第2版)」(有斐閣、2019年)263頁以下

(司法書士・行政書士 三田佳央)