(1) 共有の意義
共有とは、一つの物を複数人が共同で所有することをいいます。例えば、友人ABC3人で自動車1台を購入した場合、その自動車はABCの共有となります。共有も物の所有の形態の一つであるから、共同所有者は、物の管理・利用・処分をすることができます。もっとも、単独所有者と同じというわけにはいきません。これは、他の共同所有者の権利を制約することになるからです。したがって、共有の法律関係を処理するにあたって、特殊な規定が必要になるのです。
共有の法律関係をめぐる問題点は、①共有者相互の内部関係、②第三者に対する対外関係、③共有関係を解消する共有物分割の3つに分けることができます。
(2) 内部関係
① 共有持分
各共有者の持分は、等しいものと推定されます。法律の規定や当事者の合意があればそれで決まります。持分とは、各共有者がそれぞれ目的物に対して持っている権利のことです。持分は量的に制限された所有権と考えられています。持分の量的割合のことを持分の割合といいます。
共有者の1人がその持分を放棄したときや死亡して相続人がいないときは、その持分は他の共有者に帰属します。すなわち、共有者の1人の持分が消滅すると、他の共有者の持分が拡大することになります。これを共有の弾力性といいます。
共有持分権の譲渡は自由にできます。
② 目的物の利用
(ア) 使用
各共有者は、目的物の全部について、その持分に応じて使用することができます。例えば、目的物である自動車を1か月ずつ順番に乗るような場合です。目的物について持分の割合しか利用できないわけではなく、その全部について使用することができます。例えば、土地を共有している場合、土地全体を使用できるのであって、持分の割合で土地の一部分しか使用できないわけではありません。
もし、共有者が自分の持分を超えて目的物を使用した場合、別段の合意がある場合を除き、その共有者は、他の共有者に対し、自分の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います。
(イ) 管理
目的物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格による過半数で決定します。管理に関する事項とは、目的物の利用や改良のほか、管理の方法を定める事項(管理者の選任・解任など)を含みます。目的物に変更を加えるものは、管理に関する事項には含まれません。共有者間の決定が目的物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければなりません。特別の影響を及ぼすときとは、目的物を住居や農地などの生計の手段として用いている場合などです。また、裁判所は、所在の知れない共有者など一定の共有者以外の共有者の請求により、一定の共有者を除く共有者の持分の価格による過半数で目的物の管理に関する事項を決定することができる旨の裁判をすることができます。
なお、保存行為は(自動車の修理・定期点検など)、単独でできます。
(ウ) 変更
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、目的物に変更を加えることができません。変更を加えるとは、目的物の形状または効用の著しい変更を伴う行為をいい、処分も含まれます。例えば、自動車の売却、建物の増築、田畑を宅地に造成することなどです。
共有者の1人が他の共有者の同意を得ずに目的物に変更を加える行為をしている場合、他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、行為の全部の禁止を求めることだけでなく、特段の事情のある場合を除き、行為により生じた結果を除去して目的物の原状回復を求めることができます。これは、共有者の1人が他の共有者の同意を得ずに目的物に変更を加える行為は、他の共有者の享有持分権を侵害するものだからです。
なお、共有者が他の共有者を知ることができないときや、所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者以外の共有者の同意を得て目的物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができます。
(エ) 共有者間の引渡請求
目的物を使用する共有者がいる場合であっても、持分の価格に基づいて過半数で目的物の管理に関する事項を決定することができます。したがって、現在使用している共有者の同意を得ることなく、他の共有者に使用させることができます。しかし、この決定が現在使用している共有者に「特別な影響」及ぼすときは、その承諾を得なければなりません。
他の共有者が第三者に対して目的物を使用させている場合も、同様に考えられます。
(3) 対外関係
共有も所有権の一形態であるから、目的物を第三者が無断で占有したり、無権利の登記が存在したりする場合には、所有権を侵害されているので、返還請求や妨害排除請求ができます。ところが、共有の場合には、同一の目的物につき持分権を有する他の共有者があるため、これらの請求を共有者が単独でできるのかが問題となります。
目的物の返還については、各共有者は、単独で目的物全部の返還を請求することができます。これは、目的物の返還は共有者が単独で行っても他の共有者に不利益にならないことから、保存行為であると考えられるからです。また、判例は、各共有者は、単独で目的物に存する無権利の登記の抹消を請求することができるとしています。これは、各共有者は、その持分権に基づき、保存行為として目的物に対して加えられた妨害を排除することができるからです。
これに対し、共有者全員の共有であることを裁判で主張するには、各共有者が単独ですることはできず、共有者全員でしなければなりません(固有必要的共同訴訟といいます)。これは、共有者全員が共有であることは、共有者全員について合一に確定すべきだからです。
共有者全員の共有であることを裁判で主張する場合としては、目的物を共有していることの確認を求める訴え、共有地の境界確定の訴えなどです。
(4) 共有物の分割
① 分割請求の自由
各共有者は、いつでも目的物の分割を請求することができます。分割の方法について共有者の協議がまとまらないときは、裁判所に分割を請求することができます。現物の分割や他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法での分割ができないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は目的物の競売を命じることができます。
分割をしない旨の契約は、5年を超えない期間に限りすることができます。この契約は更新することができるが、更新の時から5年を超えることができません。これは、共有は経済的にみて不利益な状態であるから、共有はなるべく早く分割して単独所有に移行する方が望ましいと考えられたからです。
② 分割の方法
分割の方法には、現物分割、代価分割(目的物を売却し、その代金を分割することです)、価格賠償(持分以上の現物(他の共有者の持分)を取得した共有者が他の共有者にその価格を賠償することです)があります。裁判所による分割の場合、原則として現物分割または価格賠償です。価格賠償の場合、他の共有者の持分は全部でも一部でも取得させることができます。
③ 分割の効果
目的物の分割がされると、各共有者は、持分権を失い、新たに財産(分割後の目的物の単独所有権、金銭請求権)を取得します。
このような効果は、実質的に、共有者の間で持分権と他の財産が交換されたとみることができます。例えば、AとBが共有する甲土地が乙土地と丙土地に分割され、Aが乙土地を、Bが丙土地を取得した場合、丙土地におけるAの持分権と乙土地におけるBの持分権を交換したとみることができます。これは、有償取引と同じだといえます。したがって、各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、持分割合に応じて売主と同様の担保責任を負うものとされています。例えば、先の例におけるAが取得した乙土地の面積が不足していた場合、AはBに対し、不足分の引渡しや代金減額に相当する金銭による調整を求めることができ、また、損害賠償請求、分割協議の解除をすることができる場合があります。
(参照条文)民法250条、255条、249条1項2項、252条1項3項5項、251条1項2項、256条1項2項、258条1項3項2項、261条、562条、563条、564条
(参考判例)最判平成10年3月24日判タ974号92頁、最判平成15年7月11日民集57巻7号787頁(民法判例百選Ⅰ(第9版)71事件)、最判昭和46年12月9日民集25巻9号1457頁
(参考文献)内田貴「民法Ⅰ(第4版)総則・物権総論」(東京大学出版会、2008年)395頁以下
佐久間毅「民法の基礎2物権(第2版)」(有斐閣、2019年)191頁以下
民法判例百選Ⅰ(第9版)70事件
村松秀樹・大谷太「Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法」(きんざい・2022年)65頁、64頁
(司法書士・行政書士 三田佳央)
