契約の主体2

(1) 法人

 ① 法人の意義

個人(自然人)以外で契約の主体となりうるものが法人です。人の集合である団体(これを社団といいます)や財産の集合体(これを財団といいます)は、それ自体が契約の主体となれると便利です。例えば、団体が団体自身の名前と資格で契約を締結したり、不動産を所有したりすることができると、法律関係が簡単かつ便利であり、団体の構成員にとっても利益が大きいのです。

もし、これらの団体が契約の主体となれないとすると、契約により発生した権利は団体構成員全員の共有となり、不動産を所有している場合には、構成員全員の共有名義としなければなりません。そのため、構成員のうちの一人が多額の借金をしている場合には、その債権者がその構成員の持分を差し押さえて債権を回収できることになってしまいます。これでは、いくら団体にたくさんの資産があっても、それを当てにして団体と取引をすることが危なくてできず、団体にとっても損なことです。

以上のような不都合を避けるためには、団体があたかも自然人のように自らの名前で契約の当事者となり、構成員とは独立した団体自身の財産を所有することを認めるのが便利なのです。そうすれば、不動産を自分で所有することができるとともに団体の名義で所有権の登記できるし、団体が所有する財産なら、構成員の債権者が差し押さええうこともなくなります。このことは、財産の集合体についても同様に契約の主体となりうることを認めることができます。

このように、団体や財産の集合体に、あたかもそれがひとりの人であるかのように契約の主体となりうることを認めたのが法人という制度なのです。すなわち、法人制度とは、団体や財産の集合体に権利能力を認めたものであるということです。

 ② 法人の種類

 (ア) 公法人と私法人

公共の事業を遂行することを目的とし、公法(公的機関と私人(民間人のことです)の法律関係を規律する法律のことです)に準拠して成立した法人を公法人といいます(国・公共団体・土地改良区など)。これに対し、私人の自由な意思決定による事務遂行のために、私法(対等な民間人を規律する法律のことです)に準拠して成立した法人を私法人といいます(会社・一般社団法人・一般財団法人・学校法人など)。

公法人は、それぞれ個性を持ち、その任務や成立の根拠・組織の決定・強制的機能(例えば、賦課金・徴収金などにつき、滞納処分の方法により徴収できることなど)・国家的監督などにおいて、私法人とは異なる特色を有しています。

 (イ) 社団法人と財団法人

私法人には、社団法人と財団法人の2種類があります。社団法人は、人の集合である団体に権利能力が認められたものであり、社員総会が最高の意思決定機関、理事が業務執行機関となって自律的活動を行います。財団法人は、設立者が拠出した財産の集合体に権利能力を認めたものであり、定款に示された設立者の意思を活動の準則とし意思決定と業務執行は理事会が行い、評議員会が理事の選任・解任、定款変更など一定の重要事項について決定します。

 (ウ) 公益法人・非営利法人・営利法人

学術・技芸・慈善・祭祀・宗教その他の公益を目的とする法人のことを公益法人といいます。営利事業を営むことを目的とする法人を営利法人といいます。また、公益でも営利でもない事業を営むことを目的とする法人を非営利法人といいます。公益法人・非営利法人は、その目的によって一般社団法人や一般財団法人を設立することができ、そのうち公益活動を行っているものについては、公益認定を受けて公益法人となることにより、優遇税制の適用を受けられるようになります。営利法人は、会社法によって規律されます。

 (エ) 内国法人と外国法人

日本の法律に準拠して成立し、日本に住所を有する法人が内国法人であり、外国の法律に準拠して成立した法人が外国法人です。法律や条約により認許された外国法人は、その成立が認められます。そのような外国法人は、登記をしなければなりません。ただ、権利能力に一定の制限が加えられることがあります。

 ③ 法人の仕組み

 (ア) 序説

ここでは、非営利法人である一般社団法人と一般財団法人の基本的な仕組みについて説明します。なお、一般社団法人と一般財団法人の仕組みは会社法がモデルとなっており、営利・非営利を問わず、法人をめぐる法律問題の詳細は会社法の学習の中で学ぶのが有益との指摘があります。

 (イ) 一般社団法人

  ㋐ 設立

一般社団法人の設立には、まず、社員となろうとする2人以上の者(これを設立時社員といいます)が定款を作成する必要があります。作成した定款には、設立時社員全員が署名または記名押印しなければなりません。この定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。これは、後日の紛争を予防するためです。

定款には、①目的、②名称、③主たる事務所の所在地、④設立時社員の氏名または名称・住所、⑤社員の資格の得喪に関する規定、⑥公告方法、⑦事業年度について、必ず記載しなければなりません。これらの記載事項を必要的記載事項といいます。必要的記載事項が記載されていない定款は無効です。このほか、法律の規定により定款の定めがなければ効力を生じない事項(これを相対的記載事項といいます)と、その他の事項で法律の規定に違反しない事項(これを任意的記載事項といいます)を記載することができます。相対的記載事項は、定款に記載しないと効力が生じませんが、任意的記載事項は記載してもしなくてもよい事項ですが、定款に記載することによって、その変更には定款変更の手続が必要となります。

なお、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しないとされています。これは、一般社団法人を営利法人としては設立できないことを規定したものです。このように、定款に記載しても効力を有しない事項を無益的記載事項といいます。

一般社団法人は、設立の登記によって成立します。

  ㋑ 組織

  (A) 法人の権利能力

法人は、権利能力が認められる存在なので、契約の主体としてその構成員から独立し、法人の名前で権利を取得し義務を負担するだけでなく、法人の名前で登記することができ、法人の財産や債務は構成員や代表者の財産や債務とは関係を持たないのが原則です。

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し義務を負うものとされています。これは、代表者の代表権を制限した規定であると考えられています。この目的の範囲は、判例は、営利法人においては広く解釈されているが、非営利法人においては厳格に解釈される傾向にあります。目的の範囲外の行為は無権代理となります。

  (B) 社員

   ⓐ 社員の意義

一般社団法人における構成員のことを社員といいます。従業員や会社員のことを指すのではありません。社員は、一般社団法人の機関である社員総会の構成員として当該法人の運営に関与していくことになります。

   ⓑ 社員の資格の得喪

社員の資格の得喪については、定款の必要的記載事項となっています。したがって、それぞれの法人ごとに異なります。例えば、社員総会の決議による・理事会の決議による・一定の資格を有する者などと規定することが考えられます。なお、社員は法人であってもかまいません。

社員にはいつでも脱退する自由が保障されています。

   ⓒ 社員の権利・義務

社員は、社員総会の構成員として、議決権を行使することができます。また、社員は単独で法人の業務執行について監督する一定の権利を有します。例えば、理事の定款違反行為等の差止めを請求する権利、当該法人に対して理事等の責任を追及する訴えの提起を請求する権利、当該法人の計算書類等の閲覧請求権などがあります。また、任務懈怠を理由とする理事等の当該法人に対する責任を全部免除する場合には、総社員の同意が必要です。

社員は、定款で定めに従って、当該法人に対して経費を支払う義務を負います。これは、一般社団法人は積極的に収益を上げる活動をすることが予定されていないからです。

前述したように、一般社団法人は、社員に対し、利益配当請求権や残余財産分配請求権を取得させることができません。

  (C) 法人の機関

   ⓐ 意義

法人は、その業務を自ら行うことができません。そのため、法人の機関によってその業務が行われます。一般社団法人に設けられる機関のうち、必須の機関は、社員総会と理事です。定款の定めによって置くことができる機関は、理事会・監事・会計監査人です。

   ⓑ 概要

   (ア) 社員総会

社員総会は、法律に規定する事項および一般社団法人の組織・運営・管理その他当該法人に関する一切の事項について決議をすることができます。ただし、理事会が設置された場合には、法律に規定する事項および定款に定めた事項に限り、決議をすることができます。

法律により社員総会の決議事項とされているものには、社員の除名、理事・監事・会計監査人の選任・解任、理事の利益相反取引についての承認(ただし、理事会が設置されている場合には、理事会の決議事項となります)、任務懈怠を理由とする理事等の当該法人に対する責任の一部免除、定款の変更、事業の全部譲渡、解散、合併契約の承認などがあります。これらの事項については、定款で理事会などの決議事項とする定めを設けても無効です。これらの決議事項は、当該法人にとってきわめて重要な事項であり、当該法人の構成員により構成される社員総会で決議する必要があるからです。

社員総会における決議は、原則として、多数決によって行われます。決議要件は、決議事項によって異なります。議決権の数は、社員1人につき1個です。

社員総会の決議に対しては、その法的な不具合(これを「瑕疵(かし)」といいます)の程度に応じて、社員総会決議不存在確認の訴え・社員総会決議無効確認の訴え・社員総会決議取消しの訴えを提起することができます。

   (イ) 理事

理事は、一般社団法人の業務執行機関です。一般社団法人では1名以上の理事を置かなければなりません。ただし、理事会が設置されている場合には、各理事には業務執行権限はなく、理事会の構成員となるにすぎません。また、この場合には、理事は3名以上置かなければなりません。

理事は、社員総会の決議によって選任されます。当該法人と理事との関係は、委任に関する規定に従うことになります。理事の任期は2年です。この期間を短縮することはできますが、伸長することはできません。これは、あまり長い人気だと社員が理事の適否を判断する機会が奪われ、健全な法人運営にとって好ましくないからです。なお、法人は理事になることができません。

理事は、任期満了すれば退任するほか、社員総会の決議によって任期の途中であってもいつでも解任されることがあります。ただし、正当な理由なく解任された理事は、当該法人に対して損害の賠償を請求することができます。

各理事は、当該法人を代表します。すなわち、各理事は、それぞれ代表理事となるのです。ただし、定款・定款の定めに基づく理事の互選・社員総会の決議によって、代表理事を定めた場合には、その者だけが代表理事となります。また、理事会が設置されている場合には、理事会が理事の中から代表理事を選定します。代表理事は、当該法人の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有します。このように、代表理事には、包括的な権限が与えられているのです。

   (ウ) 理事会

理事会は、すべての理事で組織され、当該法人の業務の決定・理事の職務の執行の監督・代表理事の選定と解職を行います。業務執行の決定を代表理事に委ねることもできますが、重要な財産の処分や譲受けなど、一定の重要な業務執行については、理事会が決定しなければなりません。

理事会の決議は、理事の多数決によって行われます。ただし、決議事項について特別の利害関係を有する理事は、その決議に加わることができません。

   (エ) その他の機関

    ㋐ 監事

一般社団法人は、監事を置くことができます。ただし、理事会を設置している場合と会計監査人を設置している場合には、監事を置かなければなりません。

監事は、理事の職務を監督します。理事が法令違反・定款違反の行為をしないように監査するのです。その職務を遂行するために、いつでも理事および使用人に対して業務の報告を求めることができます。また、理事が法令違反・定款違反の行為をし、また、そのおそれがある場合には、理事の行為の差し止めを請求することができます。

監事は社員総会の決議によって選任されます。当該法人と監事との関係は、委任に関する規定に従うことになります。監事の任期は4年です。監事は、任期満了すれば退任するほか、社員総会の決議によって任期の途中であってもいつでも解任されることがあります。ただし、正当な理由なく解任された監事は、当該法人に対して損害の賠償を請求することができます。

    ㋑ 会計監査人

一般社団法人は、会計監査人を置くことができます。

会計監査人は、当該法人の計算書類および附属明細書を監査します。そして、その監査に際して理事の不正や法令違反・定款違反を発見した場合には、監事に報告します。

会計監査人は、社員総会の決議によって選任されます。当該法人と会計監査人との関係は、委任に関する規定に従うことになります。会計監査人は、公認会計士または監査法人でなければなりません。会計監査人の任期は1年ですが、定時社員総会で別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなされます。会計監査人は、任期満了すれば退任するほか、社員総会の決議によって任期の途中であってもいつでも解任されることがあります。ただし、正当な理由なく解任された会計監査人は、当該法人に対して損害の賠償を請求することができます。

  (D) 解散・清算

   ⓐ 解散

一般社団法人は、①定款で定めた存続期間の満了、②定款で定めた解散の事由の発生、③社員総会の決議、④社員が欠けたこと、⑤合併(合併により当該法人が消滅する場合に限ります)破産手続開始の決定、⑥解散を命ずる裁判によって解散します。一般社団法人は、解散すると、その後は、清算手続に入ります。

   ⓑ 清算

一般社団法人が解散すると清算手続が開始します。一般社団法人は、解散してもすぐに消滅するのではなく、清算が結了するまではなお存続するものとみなされます。

清算手続は、当該法人の清算人によって進められます。当該法人の理事が原則として清算人になります。清算人の職務は、①現務の結了、②債権の取立ておよび債務の弁済、③残余財産の引渡しです。残余財産は、社員以外の者に帰属させることになります。

清算人は、清算事務が終了したときは、決算報告を作成し、それを社員総会に報告し、承認を受けなければなりません。その後、清算結了の登記をすることによって、清算手続は終了します。

  (E) 法人の不法行為責任

一般社団法人は、代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。これは、法人が代表者とは別個の法的主体であることを前提に、代表者の職務執行上の不法行為について当該法人がその損害賠償責任を負わされる規定であると説明されています。法人が代表者の行為について責任を負うのは、当該法人が代表者の行為によって対外的な活動をし、利益を自分のものとして受けているからです(これを報償責任といいます)。

  (F) 役員等の不法行為責任

役員等(理事・監事・会計監査人のことです)がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、その理事等は、その行為によって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うことになります。これは、役員等の業務執行行為によって第三者に損害を与え、不法行為の要件を充たしている場合には、その役員等は不法行為に基づく損害賠償責任を負いますが、第三者を保護するため、不法行為責任の原則を修正して特別の責任を定めたものです。この責任を負う役員等が複数いる場合には、その役員等は連帯債務者とされます。

  (G) 基金制度

一般社団法人には、基金という制度があります。これは、社員その他の者が当該法人に拠出する金銭その他の財産であって、財産を拠出した者に対して返還義務を負うもののことです。これは、非営利目的の一般社団法人においても、出資と同様のことを可能にするための制度です。

 (ウ) 一般財団法人

  ㋐ 設立

一般財団法人の設立者は、定款を作成し、署名または記名押印します。定款には、目的・名称などの必要的記載事項を記載しなければなりません。このほか、相対的記載事項や任意的記載事項を記載することができます。相対的記載事項として重要なのは、基本財産に関する事項についてです。理事は、当該法人の財産のうち当該法人の目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めた基本財産があるときは、定款で定めるところにより、その財産を維持しなければならないだけでなく、その財産について当該法人の目的である事業を行うことを妨げる処分をすることができなくなります。

また、①理事または理事会が評議員を選任・解任する旨の定款の定め、②設立者に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは無効です(無益的記載事項)。①は、後述のように評議員会が理事の選任・解任をする立場にあるからです。②は、一般財団法人を営利法人として認めていないからです。

設立者が作成し、署名または記名押印をした定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。

設立者は、定款認証後遅滞なく、財産の拠出をしなければなりません。これは、一般財団法人の設立は、一定の目的のために使われる財産を作ることを目的としているからです。拠出される財産の額は、300万円以上でなければなりません。300万円を維持できない一般社団法人は解散させられます。

一般財団法人は、設立の登記によって成立します。

なお、一般社団法人は、遺言によって設立することもできます。

  ㋑ 機関

  (A) 評議員・評議員会

一般社団法人には、評議員および評議員会を置かなければなりません。評議員は、評議員会の構成員です。評議員会は、社員総会のない一般財団法人において、社員総会の代わりに理事の選任・解任などを行います。

評議員は、会議体としての評議員会を構成するので、3人以上でなければなりません。評議員の選任・解任の方法は、定款の必要的記載事項です。選任された評議員と当該法人との関係は、委任の規定に従います。評議員の任期は、4年ですが、定款の定めによって、6年まで伸長することができます。

評議員会は、法律に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議をすることができます。評議員会の決議方法は、社員総会の方法とほぼ同じです。

  (B) 理事・理事会・監事・会計監査人

一般財団法人は、理事・理事会・監事を置かなければなりません(一般社団法人の場合とことなり、理事会の設置が必須となっています。これは、一般社団法人には社員がいないので、理事会を設置することによって社員総会の権限が制限されることを考慮する必要がないからです)。また、会計監査人を置くことができます。それぞれの権限などは一般社団法人の場合とほぼ同じです。

 (エ) 解散・清算

解散・清算については、一般社団法人の場合とほぼ同じです。

(2) 権利能力のない社団

 ① 意義

社団の実体を有するが権利能力を持たない団体を権利能力なき社団といいます。社団の実体を有するとは、団体としての組織をそなえ、多数決の原則によって行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいうとするのが判例です。

設立中の団体や法人化の手続をしていない団体をどのように扱うかという問題があります。これらの団体は、権利能力なき社団であるとされています。そこで、権利能力なき社団の法的処理について理解することが必要なのです。

 ② 権利義務の帰属

 (ア) 総説

判例は、団体の権利義務は構成員に総有的に帰属するものとしています。総有とは、集団でひとつの物を所有しているが、個々の構成員に持分はなく収益権能しか残らない団体的色彩の強い共有形態のことです。そのため、特段の合意のない限り、構成員の持分権や財産分割請求権はないということになります。このことから、権利能力なき社団の権利義務の関係は、次のように考えられています。

 (イ) 債務の帰属および責任

この点について、判例は、代表者が社団の名前で行った取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の債務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、各構成員は取引の相手方に対し、直接には個人的債務および責任を負わないものとしています。このことから、代表者個人の責任も否定されるものと考えられます。

 (ウ) 契約の形式

権利能力なき社団の権利義務は構成員に総有的に帰属するものの、その社団の代表者によってその社団の名前で構成員全体のために権利を取得し義務を負うことができるとされています。これは、いちいちすべての構成員の氏名を列挙することが煩わしいのでそれを避けるためです。

 (エ) 登記名義

不動産の登記名義については、社団の代表者が社員の構成員の受託者としての地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎないとするのが判例です。すなわち、社団名義の登記や、社団の代表者である旨の肩書付した代表者個人名義の登記をすることはできません。これは、社団の資産である不動産については、社団の構成員全員に総有的に帰属するのであって、社団自体が権利主体となり得るものではなく、登記請求権を有するものではないからです。

 (オ) 構成員の債務と社団の財産

権利能力なき社団の代表者や構成員の債権者は、当該社団の財産から弁済を受けることができません。これは、権利能力なき社団の財産は、代表者や構成員の財産ではなく、実質的には当該社団の財産だからです。

(3) 組合

 ① 組合契約

自然人の集合体である団体には、法人のほかに組合という形態があります。そこで、ここでは組合について説明します。

組合は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを内容とする契約です。例えば、Aが資金として100万円を出資し、Bが韓国の雑貨を仕入れ、Cがその雑貨を販売するという合意が、ABC間で成立した場合です。ABCによって法人が設立されたわけではありませんが、共同の事業を営む団体が形成されているのです。

組合は、各当事者が共同して事業を営む点において、社団法人に類似する側面がある反面、あくまで契約であって法人ではないので、次のように、法人の設立・組織・運営・管理とは異なる側面を有しています。

 ② 組合の成立

 (ア) 要件

組合は、出資をして共同の事業を営むという各当事者の意思表示の合致によって成立します。

「出資」は、財産的価値があるものであればよいとされています。例えば、金銭・動産・不動産・債権・知的財産権・労務などです。信用(組合債務の全部について保証することなど)でもよいです。出資は、全員がしなければなりません。出資の義務を負わない者は、共同の事業を営む者とはいえないからです。

「共同の事業」には、制限がありません。営利を目的とするものでも、組合員の共通の利益(共益)を目的とするものでも、公益を目的とするものでもよいです。事業は、継続的なものでなくても、一時的なものでもよいです。組合員に利益を分配する場合には、全員が利益を受けるものでなければなりません。

法人の設立においては、定款を作成することが要件とされていますが、組合においては、書面等の作成は要件とはされていません。ただ、実際には、書面で組合規約を作成することが多いです。また、法人の設立は契約とは異なる法律行為であるとされています(当事者間の申込みと承諾という意思表示の合致を要件とするものではなく、内容と方向を同じくする複数の意思表示の合致を要件とするものであり、「合同行為」と呼ばれています)。

 (イ) 組合員1人についての意思表示の無効等

組合員の1人について意思表示の無効(心裡留保・虚偽表示)・取消し(錯誤・詐欺・強迫)の原因があっても、他の組合員の間においては、組合契約の効力は妨げられません。これは、当事者の1人の意思表示が無効・取消しとなった場合は、その契約は効力を生じないことになるのが原則ですが、組合契約においては、組合の存続を望む他の組合員の利益や組合の成立を信じて取引関係に入った第三者の利益を害するおそれがあり、他方、意思表示に無効・取消しの原因のある当事者を保護する必要があるからです。

組合員の1人についての意思表示の無効や取消しは、その組合員との関係で効果を生じます。その組合員は、出資した財産がある場合には、原状回復としてその返還を受けることになります。残存組合員のみでは組合を存続することができない場合は、組合を解散することになります。

一般社団法人については、設立取消しの訴えによることになりますが、組合では、訴えによる必要はありません。

 ③ 組合の財産

 (ア) 出資の履行

組合契約が成立すると、各組合員は出資をする債務を負います。出資の内容や時期は組合契約で定めます。

金銭を出資する債務を怠ったときは、その利息を支払うほか、損害を賠償しなければなりません。これは、金銭の出資を怠ると組合の事業に支障をきたすことが当然に予想されるからです。

組合員は、ある組合員が出資の債務を怠っていることを理由に、自己の出資の債務の履行を拒むことはできません。例えば、ABCの3人で組合契約を締結し、Aは出資を履行したが、BCがいまだ出資を履行していない場合に、AがBに出資の履行を請求したときに、BがCの出資の履行がされていないことを理由に自らの出資の履行を拒絶することは認められないのです。これは、同時履行の抗弁は、契約による給付が各自の利益と交換されることを前提としているが、組合契約は各組合員が同一の目的のために出資することを内容とするものなので、その前提を異にしているからです。また、出資を履行していないCから履行の請求をされたとしても、Bは自らの履行を拒絶することはできないとされます。これは、組合の業務の円滑化のためです。

組合員は、ある組合員の出資の債務が責めに帰することができない事由によって履行できなくなった場合であっても、自己の出資の債務の履行を拒むことはできません。この場合に債務者の危険負担の規定を適用すると、他の組合員が出資の履行を拒むことが可能となってしまうからです。例えば、ABCの3人で組合契約を締結し、Aは出資を履行したが、Bがいまだ出資を履行しておらず、Cの出資の履行が責めに帰することのできない事由によって不可能となった場合において、AがBに出資の履行を請求したときに、Bが自己の出資の履行を拒むことができるとすると、Bの出資が履行されず組合の事業の遂行に支障をきたすことになってしまうのです。

組合員は、他の組合員が出資の債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができません。これは、各組合員が解散請求をすることができるのは「やむを得ない事由があるとき」に限られているので、債務不履行による組合契約の解除を認めることはできないからです。組合には、解散請求のほか、組合員の除名、脱退、組合の解散といった各制度があり、組合の団体性を考慮したこれらの制度により解決すべきです。なお、出資の債務以外の債務の不履行についても、同様に解除することはできないとされています。

出資の債務が履行されると、出資された財産は、組合の財産となります。

(イ) 組合の財産関係

組合財産は、総組合員の共有に属します。組合は、法人と異なり、権利能力を有しないからです。法人は権利能力を有するため、法人の財産は法人に帰属します。この点が組合と法人の最も大きな差異であるといえます。このことから、組合の財産関係と法人の財産関係は、大きく異なる扱いがされています。

組合財産には、動産(パソコン・自動車など)、不動産(土地・建物)、現金・預貯金、債権(売掛金請求権など)、債務(借入金債務など)があります。総組合員の共有に属することの内容について、組合財産ごとに見ていくことにします。

 ㋐ 動産・不動産

動産・不動産のような組合財産については、各組合員は、組合財産の全部を各自の持分に応じた使用をすることができます。各組合員の持分は、出資額の割合と考えられています。もっとも、組合財産における共有は、通常の共有とは、次の点において異なります。

まず、持分の処分についてです。通常の共有では、持分を自由に処分することができます。これに対し、組合員が組合財産の持分を処分したときは、組合や組合と取引をした第三者に対して持分を処分した事実を主張することができません。これを認めると、持分の譲受人と他の組合員の共有となり組合の事業に支障をきたすことになるから、また、組合財産が減少してしまうからです。また、組合員の債権者は、組合財産について、権利を行使(差押えなど)することができません。これを認めると、組合員の持分の処分と同様の結果となるからです。

次に、組合財産の分割についてです。通常の共有では、いつでも共有物の分割を請求することができるのが原則です。これに対し、組合員は、清算前に組合財産の分割を請求することができません。これを認めると、組合の事業に支障をきたすからです。

以上のように、組合財産の共有は、共同の事業を営むという観点から、通常の共有とは異なる点があります。このことから、組合財産の共有については「合有」と呼ばれることがあります。

 ㋑ 債権

組合の債権も総組合員の共有となります。しかし、組合員はその債権の持分について単独で権利を行使することができません。そのため、組合員は、組合の債権について、組合員全員で共同してのみ行使することができるのです。このことによって、分割債権の規定が適用されないことが明確にされているのです。また、組合員の債権者は、組合財産について相殺などの権利を行使することができません。これを認めると、組合員の持分について組合の債権の行使を認めることになってしまうからです。

 ㋒ 債務

 (A) 組合の債権者と組合財産

組合員全員が共同して、または、組合代理によって、金銭を借り入れた場合の借入金債務などが組合の債務です。この場合における貸主のことを組合の債権者といいます。

組合の債権者は、組合財産について権利を行使することができます。組合債務は、金銭債務のような可分給付を目的とするものであっても、各組合員に分割して帰属するのではなく、各組合員に帰属し、組合財産を権利行使の対象とすることになります。このことによって、分割債務の規定が適用されないことが明確にされているのです。

 (B) 組合の債権者と組合員の財産

組合の債権者は、各組合員に対しても権利を行使することができます。その割合は、①各組合員の損失分担の割合か、②等しい割合であり、債権者がどちらかを選択することができます。ただし、その債権の発生時に①を知っていたときは、その割合によることになります。各組合員は、組合財産の責任と併存してこの責任を負うのです。そのため、各組合員は、組合の債権者に対し、先に組合財産に対して権利を行使するように請求することはできません。

 ㋓ 損失分配

組合の事業により利益が生じたときには、その利益を各組合員に分配し、損失が生じたときには、その損失を各組合員が分担します。これを損益分配といいます。各組合員が損益分配の割合を定めたかったときは、各組合員の出資の価額に応じてその割合を定めることになります。もっとも、利益または損失についてのみ分配の割合を定めたときは、利益と損失に共通の割合であるものと推定されます。利益と損失の両方について分配の割合を定めることも可能です。

④ 組合の業務執行

(ア) 業務執行者を定めない場合

組合の業務は、組合員の過半数によって決定し、各組合員がその業務を執行するのが原則です。例えば、組合が事業用資金の借入れをする場合、組合が事業用資金の借入れをするという決定が、業務執行の決定であり、その決定に基づき、組合のために融資先と交渉し、消費貸借契約を締結し、借入金を受領するといったことが、業務の執行です。組合員全員の同意を要するとすると組合の業務が停滞してしまいますが、各組合員が単独で決定することができるとすると、他の組合員との矛盾が生じることや多くの組合員の意思に反する結果を生じることがあります。そこで、各組合員の信頼関係によって成り立っている組合においては、頭数による過半数によって決定されることとされており、株式会社のように出資の額に応じて議決権が与えられるとはされていないのです。

もっとも、権利能力を有しない組合においては、消費貸借など契約の効果が組合に帰属するには、それを行う権限を有していなければなりません(効果帰属要件)。この場合における組合について代理の規定があります。

なお、組合の常務は、各組合員が単独で行うことができるが、その常務の完了前に他の組合員が異議を述べたときは、組合員の過半数によって決定することになります。常務とは、日常の軽微な事務のことであり、例えば、物品販売を目的とする組合で、その物品の店舗の陳列や宣伝方法を定めることなどである。常務の決定についてまで組合員の過半数によって決定しなければならないとすることは煩雑になるので、各組合員が単独で行うことができるとされているのです。

組合の業務を決定・執行する組合員については、委任の規定の一部が準用されます。これは、組合の業務を決定・執行する組合員と他の組合員との間に委任契約が締結されているわけではないが、委任における委任者と受任者との関係と同様に、個人的な信頼に基づいて成り立っているからです。具体的には次の通りです。組合の業務を決定・執行する組合員は、組合契約の本旨に従い善良な管理者の注意義務をもって決定・執行する義務を負います。原則として、組合員自ら決定・執行しなければならず、他に委任する場合には民法の規定に従うことになります。他の組合員に対する報告義務、受取物引渡等の義務、金銭の消費についての責任を負います。特約がなければ報酬を請求することができませんが、特約ある場合は、民法の規定に従って報酬を請求することができます。費用の前払請求や償還請求等をすることができます。

(イ) 業務執行者を定めた場合

 ㋐ 業務執行者と組合員の関係

組合の業務の執行とその執行は、組合契約の定めるところにより、一部の組合員や第三者に委任することができます。委任を受けた者を業務執行者といいます。業務執行者は一人でも数人でもよいです。業務執行者が数人あるときは、その過半数によって業務の執行を決定し、各業務執行者がその業務を執行することになります。

組合の常務は、各業務執行者が単独で行うことができますが、その完了前に他の業務執行者が異議を述べたときは、業務執行者の過半数によって決定することになります。

業務執行者でない組合員は、組合の業務の決定・執行をする権利を有しないことになりますが、その業務及び組合財産の状況を検査することができます。この権利は、組合契約である以上、業務執行者でない組合員に最低限認められるべき権利であるので、特約によって剝奪することはできないと考えられます。この権利を有しない者は共同の事業を営む者とはいえないのです。

業務執行者を定めた場合であっても、総組合員の同意によって業務を決定することや、総組合員が執行することができます。これは、業務執行者を定めた場合であっても、総組合員の同意を優先させることが、権利能力を有しない組合において共同の事業を遂行するのに適していると考えられるからです。

組合員が業務執行者である場合にも、委任の規定の一部が準用されます。組合員である業務執行者と他の組合員との間に委任契約が締結されるわけではありませんが、委任契約における委任者と受任者との関係と同様に、個人的な信頼に基づいて成り立っているからです。第三者である業務執行者との関係では、委任の規定が適用されます。

 ㋑ 業務執行者の辞任・解任

組合員である業務執行者は、正当な事由がなければ、辞任することができません。これは、組合員の一部を業務執行者とする場合、その業務執行は権利であると同時に義務でもあることから、その業務執行者が自由に辞任することができるとすると、組合の目的を達成できないおそれがあるので、正当な事由があり場合に限って辞任を認めたのです。

組合員である業務執行者は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができます。これは、業務執行者の指定は組合員の個人的な信頼に基づいてなされていることから、他の組合員による解任が自由に認められると、業務執行者の地位が不安定になって組合の業務執行に支障をきたすことになるので、正当な事由がある場合に限って解任を認めたのです。

正当な事由とは、他の組合員との意見の衝突があった場合、重大な義務違反があった場合、病気・公務等により組合の業務執行が不能となった場合などである。

第三者を業務執行者とする場合、その辞任・解任は、委任の解除の規定によります。

 (ウ) 組合代理

 ㋐ 業務執行者を定めない場合

各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができます。組合は権利能力を有しないことから、組合の業務として第三者と契約を締結する場合など組合の業務を執行するときには、組合員全員が共同して行うことになるが、組合員が多い場合などこの方法では不都合なことがあります。そこで、一部の組合員に業務執行を委ねるという方法が考えられますが、組合の業務執行として行った契約締結などの効果を組合に帰属させるには、組合員全員から代理権を与えられる必要があります。しかし、それでは組合の業務執行が停滞してしまうので、組合員の過半数の同意を得られたときには組合を代理することができるとしたのです。

ただし、組合の常務を行うときは、各組合員は単独で組合員を代理することができます。組合の常務は、各組合員が単独で行うことができるからです。

 ㋑ 業務執行者を定めた場合

業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができます。組合の場合は、他の組合員に業務執行を委任するときは、代理権を与えることが通常だからです。もっとも、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができます。第三者に対する業務執行を矛盾なく統一させたいときなどには、特定の業務執行者に組合員を代理させることが有益です。

ただし、組合の常務を行うときは、各業務執行者は単独で組合員を代理することができます。組合の常務は、各業務執行者が単独で行うことができるからです。

⑤ 組合員の変動

(ア) 組合員の加入

 ㋐ 要件

組合員は、その全員の同意によるか、または、組合契約の定めるところにより、新たに組合員を加入させることができます。組合が契約であることを貫くと、原組合契約の解約と新組合契約の締結をしなければならないことになりますが、これは迂遠であり無用のコストを要することになってしまいます。そこで、簡易的な方法での組合員の加入を認めているのです。

 ㋑ 効果

加入した組合員は、組合員としての権利義務を負います。具体的には、加入した組合員は出資をする義務を負い、その出資を含めた組合財産に対して持分を取得します。加入した組合員の出資も組合の債権者の権利行使の対象となります。ただし、加入した組合員は、加入前に生じた組合の債務については、組合員個人として弁済する責任を負いません。組合は、法人と異なり権利能力を有しないことから、加入する組合員において、加入前に生じた組合の債務について、当然に責任を負うものとすることは適当でないからです。

(イ) 脱退

脱退の場合においても、加入の場合と同様に、組合が契約であることを貫くことによる不都合を避けるため、簡易的な方法での脱退を認めています。

 ㋐ 要件

 (A) 任意脱退

各組合員は、次に掲げる場合には、いつでも脱退することができます。①組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、②ある組合員の終身の間において組合が存続すべきことを定めたときです。これは、あまりにも長期間にわたり当事者を拘束することは、自由の過度な拘束になるので、それを防止するためです。

ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退をすることができません。不利な時期とは、事業年度の途中で事業の遂行や計算に支障をきたすとき、業務の担当をしていた組合員について後任がいないときなどです。やむを得ない事由とは、組合員間の意見の対立があり、対立している組合員の意見がとられるとすると自らの財産に悪影響が及ぶおそれがある場合などです。やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約における約定は無効です。これは、やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約は、組合員の自由を著しく制限するものであり、公序良俗に反するものだからです。このことから、678条1項ただし書は強行法規ということになります。

 () 非任意脱退

任意脱退のほか、組合員は、①死亡(組合員の相続人は、組合員の地位を相続しません)、②破産手続開始の決定を受けたこと、③後見開始の審判を受けたこと、④除名(特定の組合員における組合員としての地位を奪うことです)によって脱退します。

組合員の除名は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってすることができます。これは、正当な事由なくして他の組合員を排除するため濫用されることを防ぐためです。正当な事由とは、出資債務の不履行そのた重要な義務の不履行、業務執行にあたっての不正な行為などです。ただし、除名した組合員に除名した旨を通知しなければ、その組合員に除名の効力を主張することができません。除名された者を保護するためです。

 ㋑ 脱退の効果

脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合財産の状況に従ってしなければならなりません。脱退した組合員は、組合員の地位を失いますが、組合は、他の組合員との間では存続します。脱退した組合員は、組合財産について持分を有するので、脱退時における状況に従って清算することになります。純資産がプラスである場合、脱退した組合員はその持分の払い戻しをすることになりますが、この場合、出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができます。純資産がマイナスである場合、脱退した組合員は、損失分担の割合に従って、自己の負担部分に相当する額を支払わなければなりません。脱退の時にまだ完了していない事項については、完了後に計算することができます。

脱退した組合員と組合の債権者との関係は、別の規律によって清算されます。脱退した組合員は、脱退前に生じた債務について、脱退前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を提供させることや、組合に対して自己に免責を得させることを請求することができます。脱退した組合員は、この組合の債務を弁済したときは、組合に対して求償することができます。これは、脱退した組合員と組合との関係としては、組合の債務は組合財産をもって弁済すべきものであり、脱退した組合員にとって組合の債務は他人の債務だからです。なお、脱退後に生じた組合債務については、脱退した組合員は責任を負いません。

⑥ 組合の解散・清算

(ア) 組合の解散

組合は、以下の事由によって解散します。①組合の目的である事業の成功・成功の不能、②組合契約で定めた存続期間の満了、③組合契約で定めた解散の事由、④総組合員の同意。

また、やむを得ない事由があるときは、各組合員は、組合の解散を請求することができ、この請求によって解散する。やむを得ない事由とは、目的である事業が成功不能とまではいえないが著しく困難となった場合、組合員の信頼関係が壊されて事業を円満に継続することが到底できないような事情がある場合などです。

組合の解散は、将来に向かってのみその効力を生じます。すなわち、それまでにされた組合の事業のために行われた業務執行などは、その効力を失わないのです。

(イ) 組合の清算

組合が解散すると、清算が行われます。組合の清算は、総組合員が共同して行うか、または、選任した清算人が行います。清算人の選任は、組合員の過半数によって決定します。

清算人の職務は、①現務の結了、②債権の取立て・債務の弁済、③残余財産の引渡しです。また、清算人は、これらの職務を行うために必要な一切の行為をすることができます。③の残余財産は、組合財産により組合債務を弁済した残余のことです。この残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割することとなります。

清算人の業務の決定・執行の方法は、業務執行者の規定に準ずることとなっています。清算人は、清算業務を決定・執行する点において、業務執行者に準ずる立場にあるからです。具体的には次のとおりです。清算人は、清算業務を決定・執行します。清算人が数人あるときは、清算人の過半数によって決定し、各清算人が執行します。もっとも、清算業務は、総組合員の同意によって決定し、総組合員が執行することもできます。ただし、清算業務の常務は、各清算人が単独で行うことができるものの、その完了前に他の清算人が異議を述べたときは、清算人の過半数によって決定し、各清算人が執行することとなります。

組合員である清算人の辞任・解任については、業務執行者の辞任・解任の規定に準ずることとされています。清算人は、清算業務を決定・執行する点において、業務執行者に準ずる立場にあるからです。具体的には次のとおりです。組合契約の定めるところにより組合員の中から清算人を選任した場合には、その清算人は正当な事由がなければ、辞任することができません。また、組合員である清算人は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができます。

(4) 法人と組合

法人と組合とは、複数の構成員が存在することが想定され、その構成員とは別の財産が形成される点において共通していますが、権利能力が認められているか否かについて異なっており、そのことから両者の仕組みが違ったものとなっているのです。

① 成立

組合の成立は当事者間で組合契約を締結することになります。これに対し、法人を成立させるには、設立行為によることになります。この設立行為はその法人について規定を置く法律によって規律されます。この規律は、民法における契約成立の規律と大きく異なっており、より団体的な規律がされています。このため、組合の方が法人よりも成立させやすいといえます。

② 管理

組合財産の管理は、各組合員の共有とされているものの、組合の団体的性質から各組合員の持分の処分が制限されています。また、各組合員は、組合の債権者に対し、損失分担の割合の範囲で個人的な責任を負うことになります。これに対し、法人の財産は、その構成員とは切り離された独立した財産として存在することになります。このことから、法人の債権者に対しては、構成員個人としては責任を負わないことになります。この点においては、法人の方がメリットのあるものだといえます(その分、法人の債権者保護の規律がなされることになります)。

③ 運営

組合の事業の運営は、組合員全員が行うのを原則としますが、業務執行者に委任した場合には、その業務執行者が行うことになり、他の組合員は、必要最小限の権限を有するにとどまります。これに対し、法人の事業の運営は、構成員から委任された役員が行い、構成員は法人の基本的な事項に限り決議をすることができます(これを所有と経営の制度的分離といいます)。この点については、一般的には、組合は小規模な団体の運営に向いており、法人はある程度の規模のある団体に向いているといえます。

④ 組織

組合員の加入は、組合員全員の同意を要するのが原則です。これに対し、法人における構成員の加入は、各種法人を規律する法律の規定に従うことになります。例えば、一般法人では、社員の加入は定款の規定に従ってなされます。この点についても、一般的には、組合は小規模な団体の運営に向いており、法人はある程度の規模のある団体に向いているといえるでしょう。

⑤ まとめ

このように、組合と法人ではそれぞれ異なった特徴があります。そのため、どのような形態で事業を行うのかについては、事業を遂行するにあたって、その事業の目的や規模等についてもっとも適した事業形態はどれかという観点から選択することになります。このことから、組合や法人は、事業の目的を達成するために用いられる法技術であるといえるでしょう。

(参照条文)民法33条2項、35条、36条、34条、667条1項2項、667条の3、121条の2、682条1号4号、669条、419条1項、667条の2第1項2項、533条、536条、683条、541条、668条、249条1項、676条1項3項2項、677条、256条1項、675条1項2項、674条1項2項、670条1項5項2項3項4項、670条の2、671条、644条、644条の2、645条、646条、647条、648条、648条の2、649条、650条、673条、672条1項2項、651条、677条の2第1項2項、675条1項、678条1項、679条、680条、681条1項2項3項、680条の2第1項2項、682条、683条、684条、620条、685条1項2項、688条1項2項3項、686条、687条、一般法人法10条1項2項、13条、22条、11条1項、28条、48条1項、88条、278条、129条3項、111条、112条、27条、35条、60条1項2項、35条1項2項4項、30条1項、63条1項、70条1項、84条1項、92条1項、113条1項、146条、147条、148条3号、247条、251条1項、257条、49条1項2項、265条1項2項、266条1項、76条、90条1項2項3項4項、65条3項、63条1項、64条、65条1項1号、70条1項2項、77条1項2項3項4項、95条1項2項、61条、99条1項2項、103条1項、67条、107条、108条1項、68条1項、69条1項2項、148条、206条1号、207条、209条1項1号、212条、240条1項3項、78条、117条1項、118条、131条、152条1項2項、153条1項3項2項、154条、172条2項1項、155条、157条1項、163条、202条2項、170条1項2項、176条、177条、173条3項、174条1項、178条2項、189条、267条1号、274条、276条1項

(参考判例)最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁、最判平成8年3月19日民集50巻3号615頁(民法判例百選Ⅰ(第9版)6事件)、最判平成14年4月25日判時1785号31頁、最判昭和41年4月26日民集20巻4号849頁(民法判例百選Ⅰ(第6版)7事件)、最判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁(民法判例百選Ⅰ(第9版)7事件)、最判昭和32年11月14日民集11巻12号1943頁、最判昭和48年10月9日民集27巻9号1129頁(民法判例百選Ⅰ(第9版)8事件)、最判昭和47年6月2日民集26巻5号957頁、最判平成11年2月23日民集53巻2号193頁(民法判例百選Ⅰ(第9版)16事件)

(参考文献)内田貴「民法Ⅰ(第4版)総則・物権総論」(東京大学出版会、2008年)207頁以下

四宮和夫・能見善久「民法総則(第9版)」(弘文堂、2018年)95頁以下

鈴木禄弥「民法総則講義(二訂版)」(創文社、2003年)65以下

中田裕康「契約法(新版)」(有斐閣、2021年)561頁以下

(司法書士・行政書士 三田佳央)