預貯金の口座の名義人が死亡した場合に、相続人がその口座の残金を相続により取得するには、その金融機関にて相続手続をする必要があります。そのためには、その金融機関に連絡して、名義人が死亡した旨を伝えなければなりません。その後、金融機関から、相続手続に関する書類が交付または送付されます。その書類には、相続手続の案内や相続手続の届出書(相続届や相続依頼書など書類の名称は金融機関によって異なります。)があります。
預貯金の相続手続における必要書類は、おおむね①相続手続の届出書、②被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、③相続人全員の現在戸籍、④相続人全員の印鑑証明書、⑤遺産分割協議書などです。
①の相続手続の届出書には、被相続人の氏名・住所・生年月日・死亡日、相続人の氏名・住所、相続の対象となる口座の情報、相続の方法(どの相続人がどの割合で残金を取得するのかなどです。)、残金の振込先などを記載しますが、記載事項は金融機関により異なります。そして、相続人の実印を押印します。
②の被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と、③の相続人の現在戸籍に代えて、法定相続情報一覧図を提出することもできます。
④の相続人の印鑑証明書は、期限が定められていることがほとんどです(6か月以内など)。
⑤の遺産分割協議書は、たとえ作成していなかっとしても、その内容を相続手続の届出書に記載すれば相続手続をすることができます。ただ、複数の金融機関で相続手続をしなければならない場合、金融機関の数だけ相続手続の届出書に記載して実印を押印しなければならないので、その分の手間が増えます。遺産分割協議書を作成していれば、その協議書に押印すれば、相続手続の届出書への押印を省略できる場合が多いので、何度も押印をする手間を省くことができます。
また、被相続人が遺言書を作成していた場合には、その遺言書を提出することになります。自筆証書遺言の場合は、法務局の保管制度を利用していない限り、家庭裁判所での検認手続を終えた遺言書でなければなりません(検認証明書が合綴された遺言書が必要です。)。
その他、代理人に相続手続を委任する場合には、委任状、代理人の印鑑証明書が必要です。
なお、金融機関によっては、相続人や代理人の本人確認書類(運転免許証など。)の提示または写しの提出が必要です。 上記の書類は原本を提出しますが、その原本は返却されます。
金融機関に書類を提出して不備がなければ、1.2週間程で相続手続の届出書に記載された相続人の振込先に、口座の残金から振込手数料を控除した金額が入金されます。
(司法書士・行政書士 三田佳央)