子のいる夫婦が協議離婚をする際には、養育費に関する事項を定めます。これは、親権者ではなくなり子と別居することになっても、親であることに変わりはないことから、扶養義務の一内容として定められるものです。
養育費の額を定める際に、その額をどのように定めるのかが問題になります。この額には相場のようなものがあると言われています。例えば、子一人の場合の養育費の額は、月額3万円から5万円、二人の場合は月額6万円から8万円、三人の場合は月額9万円から11万円といったようなものです。
しかし、このような相場があったとしても、あくまで参考でしかありません。未成熟の子に対する扶養の程度は、子の生活を自己(別居親)の生活の一部として自己と同程度の水準まで扶養する義務であるものとして、扶養義務のある親と同程度の生活だからです。つまり、収入の多い親の生活水準の程度か、または父母が離婚しなかったならば受けていたであろう扶養の程度となります。ただし、扶養義務をする親にとって過度な負担を強いることがない程度の扶養でなければなりません。
養育費の支払いの対象となる子の年齢は、その子が成人するまでとされることが考えられます。しかし、現在では、18歳になると成人となるので、高等学校卒業までとすることになるでしょう。成人に達した子に対する親の扶養義務は、その子が生活難に陥った場合に自己に余力があれば援助すべき義務だからです。ただ、実務では、大学に通う場合には大学卒業まで養育費を支払うと定めることが多いです。
また、実務では、親権者である親が再婚し、再婚相手がその子と養子縁組をした場合には、養育費の支払いを停止することとすることが多いです。この場合、再婚相手が第一次的な扶養義務者になるからです。ただし、再婚相手の収入などが不十分である場合は、別居している親は不足分を補う養育費を支払う義務があるとする裁判例があります。
養育費に関する事項を定めたからといって、必ずしもその支払いがなされるとは限りません。養育費に関する事項を定めたにもかかわらず、その支払いがされていない場合には、強制執行をして取り立てることになります。しかし、強制執行をするには、裁判所に訴えを起こして養育費の支払いを命ずる確定判決を得なければなりません。ただし、一定の条項を定めた公正証書により作成された離婚協議書があれば、確定判決を得ることなく強制執行をすることができます。これらの手続については、弁護士や司法書士などの専門家に相談することになるでしょう。
なお、厚生労働省の調査(2016年)によれば、「養育費の支払いを受けている」24.3%、「過去に支払いを受けたことがある」15.5%となっており、養育費がその定められたとおりに支払われていないのが実情です。
(司法書士・行政書士 三田佳央)