被相続人についての相続手続きをするためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、法定相続人の戸籍謄抄本を取得することにより、法定相続人の調査をする必要があります。ただ、実際にはこれらの戸籍謄本を取得できないケースがあります。
戦争により除籍や改正原戸籍の原本が焼失していたり、廃棄されていた場合には、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書を取得してそれを提供すれば、相続登記をすることができるというのが、登記実務の取り扱いです。
被相続人の戸籍謄本は、必ずしも出生から取得しなければならないものではありません。生殖可能年齢を考慮して、被相続人に子どもが生じる可能性がある12,3歳頃からの事項の記載のある戸籍謄本等があれば、相続手続きをすることができるとされています。
私が経験したケースでは、沖縄県で出生した被相続人が、出生したときには沖縄県がGHQの占領下にあったことから、出生届をするのに外務省を通じて届出をしなければならず、その関係で出生届が受け付けられたのは、被相続人が16歳のときでした。そのため、16歳より前の事項の記載のある戸籍謄本等が存在しないので、16歳からの事項の記載のある戸籍謄本等を提出して相続手続きをしたことがあります。