成年後見人の実務(事務の範囲)

成年後見人が行う事務は契約などの法律行為に限られ、本人の日常的な身の回りの世話などの事実行為は含まれません。成年後見制度は本人の不十分な判断能力を補うための制度であり、成年後見人が法律行為を行うことが前提となっているからです。また、民法上も成年後見人の事務を本人の「生活、療養看護及び財産の管理に関する」ものであることを明示しており、成年後見人の事務を契約などの法律行為に限定しています。

本人を担当しているケアマネージャーや介護施設の相談員などから、本人を病院等に連れていってほしいと言われることがありますが、責任上の観点から、なるべく他者に任せるようにすることが望ましいです。例えば、病院や施設による送迎が可能であればそれを利用します。そのような送迎が利用できない場合には、費用はかかりますが介護タクシーなどを利用します。

本人が病院で受診する際に誰が付き添わなければなりませんが、定期的な受診のときは、成年後見人が毎回付き添うとなると過度な負担となってしまうのでヘルパーにお願いすることが多いです。ただ、この場合は実費サービスとなることが多いので、負担する費用について検討する必要があります。また、施設の職員が付き添うことができれば、付き添いをお願いしても良いでしょう。緊急性や突発性がある場合には、病院側から成年後見人に対して説明を受けるように求めることが多いです。 成年後見人の事務に事実行為は含まれませんが、法律行為に当然伴う事実行為は含まれます。例えば、介護施設に入所するために事前に当該施設を見学すること、介護施設における処遇の監視や契約内容の履行状況を確認するため当該施設を訪問すること、本人の生活状況や健康状態等を確認するため本人や関係者と面談したり電話連絡したりすること、などです。日用品等を店舗に出向いて購入することは、購入手続に当然伴う事実行為といえますので、本人にとって必要があれば日用品等を店舗にて購入することも、成年後見人の事務に該当します。ただ、ヘルパー等による買物代行サービスを利用できるときには、そのサービスを利用すると良いでしょう。