相続登記における被相続人の同一性

不動産の登記名義人が死亡した場合、その不動産について登記名義人を相続人とするため相続登記を申請する必要があります。その相続登記の申請をする際には、登記名義人である被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を提供する必要がありますが、それだけでなく、登記名義人と被相続人が同一であることを証する書類も提供しなければなりません。登記名義人と戸籍上の被相続人が同一であることを確認できなければ、その登記名義人について不実の登記手続がなされるおそれがあるからです。

ここでいう登記名義人と被相続人が同一であることを証する書類とは、被相続人の最後の本籍が登記名義人の住所と一致する場合には、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が該当することになります。戸籍上の氏名と本籍が登記名義人の氏名と住所と一致していれば、登記名義人と戸籍上の被相続人が同一である蓋然性が高いからです。

被相続人の最後の本籍が登記名義人の住所が異なる場合には、住民票の除票や戸籍の附票が、登記名義人と被相続人が同一であることを証する書類に該当するとされています。ただし、除票には本籍が記載されていなければなりません。本籍が一致することによって被相続人の戸籍と除票が結び付くからです。除票や戸籍の附票の氏名と住所が登記名義人の氏名と住所と一致すれば、登記名義人と戸籍上の被相続人が同一であることが証明されます。登記名義人の住所が、住所移転等によって変更される前の住所である場合には、その住所が記載された除票や戸籍の附票が必要になります。

住民票の除票や戸籍の附票が5年間の保存期間の満了により取得できない場合には(ただし、法改正により保存期間が150年となりました)、登記済証または登記識別情報(いわゆる権利証)を相続登記の申請の際に提供すれば、登記名義人と被相続人の同一性は証明される扱いになっています。登記済証は所有者が所持しているのが通常であり、登記済証または登記識別情報に記載されている当該登記の受付年月日および受付番号が、被相続人が登記名義人となった登記手続の受付年月日および受付番号と一致していれば、登記名義人と戸籍上の被相続人が同一である蓋然性が高いといえるからです。なお、このときに登記済証または登記識別情報の還付を受けるには、写しを作成して還付請求をすることになります。

除票や戸籍の附票を取得できず、登記済証または登記識別情報を紛失した場合には、「登記名義人と戸籍上の被相続人とは同一である」旨の上申書に、相続人全員が実印を押印して印鑑証明書を添付したものを、相続登記を申請する際に提供することを求められるという扱いがなされています。法務局によっては、この上申書の他に、不在籍証明書や不在住証明書、固定資産の課税明細書を併せて提供することを求めらることがあります。このようなケースでは事前に法務局に問い合わせて確認しておくと良いでしょう。

このように、相続登記を申請する場合には、登記名義人と戸籍上の被相続人の同一性を証する書類を提供しなければなりませんので、その際には、まず、登記名義人の住所と本籍が一致しているか確認するようにしましょう。一致していなければ除票や戸籍の附票を取得します。併せて登記済証または登記識別情報の有無を確認しておくことをお勧めします。