本人が不動産を所有していれば、成年後見人はその不動産を管理しなければなりません。本人が居住している場合には、家屋の修繕や庭などの家屋の周辺の管理をします。本人が居住していなくて空き家となっている場合には、定期的に見回りをしたり、庭木などが近隣の迷惑になっていれば除草剪定をします。倒壊のおそれがあるときには、修繕をするほか、売却や取り壊しを検討することになります。
ただ、成年後見人が本人に代わって、居住用の不動産を売却したり取り壊したりするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。この居住用の不動産には、現在居住している建物やその敷地だけでなく、転居前に居住していた建物や、その建物を取り壊して更地になった敷地も含まれます。例えば、施設に入所してから、以前居住していた自宅を売却したり取り壊しするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
居住用の不動産を処分するにあたって家庭裁判所の許可を得るには、申立書、査定書、見積書、契約書案、評価証明書などを家庭裁判所に提出します。居住用の不動産を買い受ける者が法人であれば、その法人の登記事項証明書も併せて提出します。
居住用でない不動産を売却等する場合には、家庭裁判所の許可は必要ありません。売却等をする際にはその必要性を十分に検討します。売却等をしたことについては定期報告時に家庭裁判所に報告することになります。売却等の対象である不動産が居住用であるか否か迷う場合には、家庭裁判所に相談した方が良いでしょう。
なお、居住用不動産を売却する際の登記手続には、家庭裁判所の許可書を添付する必要があるため登記識別情報(いわゆる権利証)の提供は不要ですが、居住用でない不動産を売却する際の登記手続には、原則どおり登記識別情報の提供が必要です。登記識別情報を提供できな場合には、登記申請をする司法書士などが作成する本人確認情報を提供するか、事前通知による手続をすることになります。