物権変動1(物権変動とは何か)

(1) 物権変動とは

権利は、社会において発生・変更・消滅を繰り返します。この権利の発生・変更・消滅を権利変動といいます。物権も権利の一種ですから、発生・変更・消滅が起きます。この物権の発生・変更・消滅を物権変動といいます。

(2) 物権の発生・変更

物権は様々な原因で発生します。例えば、建物の新築により建物の所有権が発生します。このような、前主の権利に依存しない物権の取得を原始取得といいます。また、売買や相続は新たな所有権の発生原因ではないが、移転によって承継人のもとn所有権が発生する原因となります。このような、前主が有する物権に基づく物権の取得を承継取得といいます。

物権の変更とは、物権の同一性が失われない限度で物権の客体や内容が変わることをいいます。例えば、建物の増築や地上権の存続期間の延長、抵当権の順位の変更などです。

(3) 物権の消滅

物権の消滅は、目的物の滅失、物権の他人への移転、放棄、他人による所有権の原始取得、所有権以外の物権の時効消滅、混同などを原因として生じます。

 ① 目的物の滅失

例えば、家屋が焼失すれば、その家屋の所有権などの物権も消滅します。付合や加工も、目的物が独立の存在を失うことによる所有権の消滅原因といえます。

 ② 放棄

物権は放棄できると考えられています。ただし、それによって第三者を害することはできません。したがって、地上権や永小作権を抵当権の目的としている場合、地上権や永小作権の権利者は、その権利を放棄しても、これを抵当権者に主張することはできません。

 ③ 消滅時効

所有権以外の物権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します。もっとも、時効期間を経過していなくても、他人が取得時効によって所有権を取得すれば、その反射的効果として、所有権も消滅します。

 ④ 混同

 (ア) 混同による物権の消滅

混同とは、二つの法律上の地位が同一人に帰属した場合に、存続させておく意味のないと認められる地位が消滅することをいいます。物権の混同には、二つの場合があります。

  ㋐ 所有権と他の物権の混同

同一物について所有権と他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の権利は消滅します。例えば、Aは、地上権の設定を受けていた甲土地を、その所有者Bから買い取った場合、地上権が消滅します。これは、Aにとって一定目的での土地使用権にすぎない地上権を残しておく意味がないからです。

  ㋑ 所有権以外の物権とそれを目的とする他の権利の混同

所有権以外の物権とこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は消滅します。例えば、Aは、甲土地の地上権者Bから、その地上権を目的とする抵当権の設定を受けていたが、その後、その地上権をBから譲り受けた場合、抵当権が消滅します。これは、抵当権の目的である地上権がA自身に帰属した以上、Aにとって、抵当権は債権担保の意味を失ったからです(自分の財産をもって自分の債権を担保することになるからです)。

 (イ) 例外

混同による物権の消滅は、その物権を存続させる意味がなくなったことを理由とするものです。したがって、物権を存続させる意味があるときは、例外が認められることになります。

  ㋐ 所有権と他の物権が同一人に帰属した場合

所有権と他の物権が同一人に帰属した場合において、目的物または他の物権が第三者の権利の目的であるときは、混同により他の物権は消滅しません。

目的物が第三者の権利の目的となっているときの例としては、Aは、地上権の設定を受けていた甲土地を、その所有者Bから買い取ったが、BからAに甲土地が譲渡される前に、CがBから甲土地について抵当権の設定を受けていた場合、地上権は消滅しません。これは、Aは、もともとCの抵当権に優先する地上権を有していたので、Cの抵当権が実行されて第三者が甲土地の所有権を取得したとしても、Aは、その地上権に基づいて甲土地を使用することができる地位にあったからです。もしAが甲土地を取得したことにより地上権を消滅させてしまうと、抵当権の実行により第三者が甲土地の所有権を取得すると、Aは、甲土地の所有権を失うだけでなく、甲土地を使用することもできなくなってしまうのです。

次に、他の物権が第三者の権利の目的となっているときの例としては、上述した設例において、Cが、Aの地上権を目的とする抵当権の設定を受けた場合、地上権は消滅しません。この場合において、混同によって地上権を証明させると、Cが、目的物の消滅により抵当権を失うことになるからです。

  ㋑ 所有権以外の物権とそれを目的とする他の権利が同一人に帰属した場合

所有権以外の物権とこれを目的とする他の権利が同一人に帰属した場合において、いずれかの権利が第三者の権利の目的であるときは、混同により他の権利は消滅しません。

所有権以外の物権が第三者の権利の目的となっている例としては、Aは、甲土地の地上権者Bから、その地上権を目的とする抵当権の設定を受けていたが、その後、その地上権をBから譲り受ける前に、Cもその地上権を目的とする抵当権の設定を受けた場合、Aの抵当権は消滅しません。これは、Aが地上権を譲り受けたことによってAの抵当権を消滅させると、その後にCが抵当権を実行したときに、Aは、甲土地の地上権を失うだけでなく、優先配当も受けられなくなるからです(AはCに優先する抵当権を有するからこそ、Cに優先して配当を受けることができるのです)。

次に、所有権以外の物権を目的とする他の権利が第三者の権利の目的となっている例としては、上述した設例において、Cのために、Aの抵当権を目的とする転抵当権(抵当権を他の債権の担保とすることを転抵当といいます)が設定された場合、Aの抵当権は消滅しません。これは、この場合に混同によってAの抵当権を消滅させると、Cが目的の消滅を理由として転抵当権を失うことになるからです。

 (ウ) 占有権についての例外

以上に述べたことは、占有権については該当しません。これは、占有権が本権と混同して消滅するという事態が考えられないことが明らかだからです。

(4) 物権変動のポイント

物権変動は、他の権利変動と同じく、当事者の合意のみによって生じることが原則とされています。ところが、第三者は、その事実を容易に知り得るものではありません。そのため、物権変動があっても、その事実が外形的に認識可能になっていなければ、第三者は、権利関係に変化がないものとして行動するのが通常です。また、第三者に物権変動の有無を実際に確かめてから行動するよう求めると、迅速な取引が著しく害されることになりかねません。そこで、物権変動の事実を外形的に認識可能なものとし、外形的に認識されない物権変動によって第三者が害されないようにすることが求められるのです。以下、契約による物権変動について述べていきます。

(参照条文)民法398条、166条2項、179条、376条1項、176条

(参考判例)

(参考文献)内田貴「民法Ⅰ(第4版)総則・物権総論」(東京大学出版会、2008年)427頁以下

佐久間毅「民法の基礎2物権(第4版)」(有斐閣、2026年)25頁以下

(司法書士・行政書士 三田佳央)