債務不履行1(債務不履行と債権の効力)

(1) 契約から生じた債権の効力

債務者が「その本旨に従った履行をしない」ことを債務不履行といいます。例えば、AがBに対し、その所有する甲パソコンを売却する合意をしたところ、BはAに対して期日に代金を提供したのにAは甲パソコンの引渡しをしようとしない場合においては、Aが債務不履行に陥っていることになります。このとき、Bが選択できる手段としては次の3つがあります。

①Bは、あくまでも甲パソコンの引渡しを求めることができます。そして、Bはその債権の内容を国家権力を使って強制的に実現するすることができます。これを履行の強制といいます。その手続については民事執行法が定めています。

②Bは、Aの債務不履行を理由として売買契約を解除することができます。解除により売買契約は解消され、Bは代金支払債務から解放されます。

③履行の強制をした場合でも、契約を解除した場合でも、あるいは、Aが期日を過ぎてから任意に甲パソコンの引渡しに応じた場合でも、Aの債務不履行によってBに何らかの損害が発生している場合には、BはAに対して損害賠償を請求することができます。

(2) 債務不履行の類型

債務不履行とは、債務者が「その本旨に従った履行をしない」ことをです。「本旨に従った」とは、契約に適合した履行という意味です。債務不履行には、弁済期が到来したのに履行がされない「履行遅滞」と、履行が不能となる「履行不能」があります。このほか、これらに含まれない債務不履行の類型もあります。

(参照条文)民法415条1項、414条、541条

(参考文献)内田貴「民法Ⅲ(第4版)債権総論・担保物権」(東京大学出版会、2020年)123頁以下

中田裕康「債権総論(第4版)」(岩波書店、2020年)90頁以下

(司法書士・行政書士 三田佳央)