数次相続の場合における相続登記1

Ⅹには、妻A、長男B、長女C、次女Dがいる。Bには、妻E、長女F、長男Gがいる。Xは甲土地を所有している。令和2年4月1日、Xは死亡した。甲不動産について相続登記をしていない。令和4年12月30日、Bが死亡した。この場合における甲土地の相続登記は、どのようにすべきでしょうか。

被相続人Xの相続人は、A・B・C・Dとなります。しかし、相続登記をする前にBが死亡しています。亡Bの相続人は、E・F・Gとなります。このE・F・Gは、亡Bの「被相続人Xの相続人」という地位を承継します。すなわち、E・F・Gは「被相続人Xの相続人Bの相続人」となります。そのため、被相続人Xの相続人は、A・C・D・E・F・Gとなります。そして、甲土地についての遺産共有状態を解消するには、この相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。この協議によって、甲土地をGに取得させることができます。

この相続登記の申請における必要書類は、①被相続人Xの出生から死亡までの戸籍謄本、②亡Bの出生から死亡までの戸籍謄本、③相続人A・C・D・E・F・Gの現在戸籍、④遺産分割協議書、⑤相続人全員の印鑑証明書、⑥Gの住民票、⑦甲不動産の固定資産評価額を証する書面です。

①によって、被相続人の法定相続人を把握します。②によって、亡Bの法定相続人を把握します。また、①と重複する部分は1部あれば足ります。④の遺産分割協議書には、「令和4年12月30日、Bが死亡した」旨の記載をしておくとよいでしょう(必須ではありません。)。E・F・Gがこの遺産分割協議に参加する資格があることを示すためです。⑤の印鑑証明書には期限がありません。⑥の住民票は、本籍の記載のあるものが必要です。なお、本籍の記載のある戸籍の附票に代えることができます。⑦には、固定資産評価証明書などがあります。

必要書類が揃ったら、相続登記の申請書を作成します。申請書には、①登記の目的、②登記原因とその日付、③申請人、④添付書類の表示、⑤申請年月日、⑥法務局の表示、⑦課税標準と登録免許税の額、⑧不動産の表示を記載します。

①には、「所有権移転」と記載します。②には、「令和2年4月1日B相続令和4年12月30日相続」と記載します。Bの相続が開始したからGが甲土地を相続することができることから、Bの相続とその日付を表示する必要があるのです。③には、括弧書きで(被相続人X)と記載し、その下部にGの住所と氏名を記載します。⑤には、甲土地を管轄する法務局を記載します。⑦の課税標準には、甲土地の固定資産評価額から1000円未満の端数を切り捨てた額を記載します。登録免許税には、課税標準に1000分の4を乗じた額から100円未満の端数を切り捨てた額を記載します。⑧には、甲土地の所在・地番・地目・地積を記載します。なお、甲土地の不動産番号を記載することにより、所在・地番・地目・地積の記載を省略することができます。

このように、数次相続による相続登記の場合には、相続人の人数が増えてしまい、その分、必要な書類の数も増えてしまいます。それだけでなく、相続人同士の関係性も希薄になりやすく、円滑に遺産分割協議をすることが難しくなるおそれがあります。そうなると、遺産分割調停の申立てをしなければならなくなります。このことは、相続登記だけでなく、預貯金など他の財産における相続手続にも当てはまります。そのため、相続が開始したときは、早めに相続手続をすることを心がけましょう。相続が発生した場合に、何をどのようにしたらよいのかわからないときには、司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)