預貯金に関する相続手続の流れ1

預貯金の口座の名義人が死亡すると、相続が開始します。預貯金の口座の残高を相続人が相続するには、金融機関にて預貯金の口座について相続手続をする必要があります。

この手続をするには、まず、預貯金の口座の取引をしている金融機関に連絡して、名義人が亡くなった旨を伝えます。連絡する窓口は、金融機関により異なります。例えば、三菱UFJ銀行の場合は、支店ではなく相続オフィスに連絡します。ゆうちょ銀行の場合は、最寄りの郵便局の窓口に出向いて名義人が死亡した旨を伝えます。その他の銀行の場合は、取引のある支店以外の支店に連絡すれば対応してもらえることが多いですが、信用金庫の場合は、取引のある支店に連絡しないと対応してもらえないことが多いです。この連絡は、窓口にて口頭で伝えることもできますが、電話して伝えることもできます(ただし、ゆうちょ銀行の場合は、窓口に出向いて伝えなければなりません。)。

金融機関に名義人が死亡した旨を伝えると、名義人が取引していた口座について、現金の入出金など一切の取引をすることができなくなります(これを「口座の凍結」といいます。)。その後、相続手続に関する書類が交付または送付されます。

ちなみに、名義人の死亡を知ったら、すぐに口座を凍結しなければならないか、という質問をされることが多いです。これは、名義人が死亡後に口座引落により公共料金や施設利用料などの支払いがされることがある場合や、入院費や葬儀費用の支払いのために、その口座から出金して現金を準備する必要がある場合があるからでしょう。

これについては、原則として、名義人の死亡を知ったときは、速やかに金融機関に連絡して、その事実を伝えなければなりません。名義人が死亡したときに、その口座の残金は相続財産となり、遺産分割の対象となるからです。また、口座の名義人が死亡した後の、その名義人に関する債務は相続人が相続するものであるから、相続人の財産をもって支払いをしなければなりません。葬儀費用については、相続人が負担するものであり、遺産から支出するものではありません。

しかしながら、実際には、入院費など早めに支払いをしなければ、病院側から委任を受けた弁護士から請求され、延滞金が発生してしまうことがあります。葬儀費用については、相続人が葬儀後にすぐに支払いをする目途が立っていないと、葬儀を手配することに躊躇してしまうことがあります。また、これらの支払いについては、原則としてその時期と額があらかじめ決まっており、領収書などでその支払いの内容が明確になっていれば、他の相続人の不利益となることもなく、他の相続人との間でトラブルになることも避けられるでしょう。

そのため、実務では、口座引落による支払いが終わるまでは、口座の凍結はせずに、口座引落による支払いを継続し、その口座から出金して入院費や葬儀費用などの支払いをして、それらが完了してから、金融機関に連絡して口座を凍結しています。この際には、その支払いに関する領収書などを保管して、どのような支払いをしたのかを説明できるようにしておくことが必須となります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)