協議離婚の際に定める財産分与1

夫婦が協議離婚をする場合には、夫婦の一方は相手方に対して財産分与を請求することができます。これは、夫婦の財産を清算することにより、離婚後における財産や所得能力の格差を是正したり、財産や所得能力の低い者(主に妻)の生活を保障したりするために認められています。

財産分与の対象となる財産は、誰の名義であるかにかかわらず、婚姻後に夫婦の協力によって取得した財産です。例えば、預金、不動産、自動車、家財道具、退職金、証券、保険金、借入金などです。

預金については、口座の名義はそのままにして、一定の金額を一時払いまたは分割払いとすることが多いです。

不動産については、住宅ローンがある場合、夫が自分名義の不動産を保持し、ローンの支払いを続けて、妻には住宅の価値の一部(時価から住宅ローンの残額を控除したものです。)を金銭で支払うことが多いとされています。妻が住宅を取得する場合でも、妻に支払能力があれば、債権者(主に金融機関)の同意を得て妻が住宅ローンの支払いを負担することができますが、妻に支払能力がないのであれば、なお、夫が住宅ローンの支払いを負担することになります。また、債権者の同意を得られなかった場合には、夫を住宅ローンの支払義務者のままにして、扶養義務の一環として住宅ローンの支払いを続けることになりますが、養育費の額を調整する必要が生じるでしょう。その他に、一定期間は住宅の名義を変更せずに、妻がそのまま住居に住み続ける権利(賃借権など)を設定するという方法もあります。なお、なお、住宅の名義を変更した場合には不動産取得税(妻)と譲渡所得税(夫)が課せられますが、それぞれ減免の制度が利用できると思われます。

退職金については、すでに支払われている退職金は、預金などさまざまな形に変わっていても、現在の財産として分与の対象となります。将来の退職金は、①それ自体を分与の対象とせずに、財産分与の額と方法を定めるにあたって考慮すべき一つの事情とするという方法、②離婚時に清算する方法、③将来の退職金が支給された時点で支払う方法があります。

借入金については、共同生活を営む上で生じた債務は(例えば、日常生活に当てるための借入れ、住宅の購入費用などです。)、財産分与の対象になります。ただし、債権者の同意を得る必要があります。その同意を得られなかった場合には、扶養義務の一環としてそのまま支払いを続けることが考えられます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)