遺留分の額の算定方法とは

各遺留分権利者(遺留分が帰属する相続人のことです。)の具体的な遺留分の額は、遺留分の基礎となる被相続人の財産の額に、個別の遺留分を乗じて算定します。基礎となる財産とは、①相続開始時に被相続人が有した積極財産に、②被相続人が贈与した財産の価額を加えて、③債務の全額を控除した額です。

①相続開始時の積極財産には、相続の対象ではない財産(一身専属権などです。)は含まれません。条件付の権利や存続期間の不確定な財産は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価額を定めます。

②被相続人が相続人以外の者に贈与した財産は、原則として、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分の基礎となる財産の価額に加算されます。贈与の時期の基準は贈与契約締結時です。

しかし、贈与者である被相続人と受贈者双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年より前になされていても加算されます。「損害を加えることを知って」とは、遺留分を侵害するという認識があればよく、損害を加えるという加害の意図や誰が遺留分権利者であるかを知っている必要はありません。

共同相続人への贈与については、遺留分権利者に損害を加えることを知らなくても、相続開始前の10年間に、婚姻、養子縁組や生計の資本としてなされた贈与に限り、加算されます。これは、相続人間の公平を図ることと、法的安定性を調和するためです。

③遺留分の基礎となる財産から控除される債務は、契約上の債務だけでなく、税金や罰金などの債務も含まれます。この債務は、被相続人が負担した債務を意味するからです。

これらの財産の評価時期は、相続開始時です。贈与された物が滅失したり、その価額の増減があったりしたときであっても、相続開始時に原状のままであるものとみなして評価します。

上述した計算方法に従って個別的遺留分を計算すると、次のようになります。例えば、被相続人Ⅹの遺産が6,000万円、債務2,000万円、相続人は妻Aと子B・C、Xは、半年前に孫Dに1,000万円を贈与しており、2年前に愛人Eに3,000万円を贈与していたが、Eには遺留分権利者に損害を加えることの認識がありました。また、Bに対して8年前に事業資金として4,000万円を贈与していました。

この場合における、遺留分の基礎となる財産の額は、積極財産6,000万円+加算される贈与の額1,000万円+3,000万円-2,000万円=8,000万円です。Bに対する贈与は加算されません。生計の資本として贈与されたものではないからです。

そして、各人の遺留分の額は、Aについては、8,000万円×1/2×1/2=2,000万円となります。B・Cについては、8,000万円×1/2×1/2×1/2=1,000万円となります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)