死因贈与と遺贈との関係

死因贈与とは、贈与者の死亡により効力を生ずる贈与のことです。死因贈与は、贈与者と受贈者(贈与を受ける者のことです。)との契約である点で、遺言者が単独でする遺贈とは異なります。しかし、贈与者の死後に効力が生じる点では、遺言者の死後に効力が生じる遺贈とは共通点があります。そのため、その性質に反しない限り、死因贈与は遺贈に関する規定に従うこととされています。どの規定に従うことになるかは、個別的に検討する必要があります。

死因贈与は契約であることから、遺言の方式・遺言能力・遺贈の承認と放棄・遺言書の検認と開封の規定には、従わないものとされています。それ以外の規定には、従うことになりますが、問題のある規定もあります。

撤回については、方式に関する部分を除いて遺贈の規定に従うとするのが、最高裁判所の判例です。死因贈与は贈与者の死亡時にその効力を生ずるものであることから、遺贈と同様に、贈与者の最終の意思を尊重すべきだからである。ただし、負担付の死因贈与において受贈者が贈与者の生前に負担の全部またはそれに類する程度の履行をしていた場合には、原則として撤回できないとされています。贈与者の最終の意思を尊重するあまり受贈者の利益を犠牲にすることは相当ではないからです。また、裁判上の和解における合意事項の一部としてなされた死因贈与においても、自由には撤回ができないとされています。

このように、死因贈与において、遺贈に関するどのような規定に従うことになるかは、事案に即して判断されているといえます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)