遺言事項と法的効力

遺言に定められる事項には制限はありませんが、その遺言事項に法的効力が認められるものは、法律により定められている事項に限ります。これは、遺言は、相手方の知らない間に作成され、遺言者の死後に効力が発生し、相手方を拘束するものだからです。

法律により、法的効力が認められている遺言事項は、下記のとおりです。

①法定相続に関する事項(推定相続人の廃除及びその取消し、相続分の指定、遺産分割の指定または禁止、遺産分割の際の担保責任に関する別段の定め。)。

②財産処分に関する事項(遺贈、受遺者の相続人の承認・放棄についての別段の定め、遺言の効力発生前の死亡についての別段の定め、受遺者の果実の収取についての別段の定め、遺贈の無効または失効の場合における財産の帰属についての別段の定め、相続財産に属しない権利の遺贈における遺贈義務者の責任についての別段の定め、受遺者の負担付遺贈の放棄についての別段の定め、負担付遺贈の受遺者の免責についての別段の定め。)。

③遺言の執行・撤回に関する事項(遺言執行者の指定、特定財産に関する遺言の執行についての別段の定め、遺言執行者の復任権についての別段の定め、遺言執行者が数人ある場合の遺言の執行についての別段の定め、遺言執行者の報酬についての別段の定め、遺言の撤回。)。

④遺留分に関する事項(目的物の価額による遺贈・贈与の負担についての別段の定め。)。

⑤家族関係に関する事項(遺言による認知、未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定。)。

⑥その他の事項(一般財団法人の設立、信託の設定、保険金受取人の変更。)。

上記以外の事項を遺言で定めたとしても、法的な効力は認められません。例えば、葬儀の方法、家族間の介護や扶養の方法などです。ただ、実務では、付言事項として、相続人に対する想いなどを記載して、相続人が遺言の内容を受け入れやすくなるように働きかけ、なるべく相続人間での争いが生じないように配慮する方法により、遺言を残されることがあります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)