遺言の効力

遺言は遺言者の死亡の時からその効力を有します。ただし、遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死後に成就したときは、その条件が成就した時からその効力を生ずることになります。例えば、「子Aが司法試験に合格したら全財産を相続させる」といった遺言の場合には、遺言者の死後にAが司法試験に合格したときは、その時点で遺言の効力が生じます。なお、遺言者の死亡前にAが司法試験に合格したときは、遺言者の死亡と同時に遺言の効力が生じます。

次に掲げる場合には、遺言は無効となります。①遺言の方式に違反した場合、②遺言作成時に遺言能力がない場合、③共同遺言の場合(二人以上の者が同一の証書でする遺言のことをいいます。)、④本人が後見の終了前に後見人・配偶者・直系卑属の利益となるべき遺言をした場合、⑤公序良俗違反の遺言。

遺言書の記述でその意味が不明な場合には、遺言者の意思について正確な法的意味を確定させなければなりません。この作業のことを遺言の解釈といいます。その解釈の基準は、最高裁判所の判例によれば、遺言書の個々の条項について、当該条項と遺言書の全記述との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況のなどを考慮して、遺言者の真意を探求し、当該条項の趣旨を確定すべきだとしています。さらに、可能な限り有効となるよう解釈すべきとされています。

しかし、法律の知識のない者が、自分の判断で作成した遺言書においては、遺言書の記述の意味が不明で、遺言の解釈をしてもその正確な法的意味を確定することができず、無効とされてしまうことがあり得ます。そのため、遺言書の作成を検討される際には、弁護士や司法書士などの専門家に相談して、解釈に疑義のない遺言書を作成されるとよいでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)