相続人の存在が明らかでない場合はどうなるか

被相続人が亡くなって相続が開始したが、相続人の存在が明らかでないことがあります。例えば、法定相続人にいない場合、法定相続人はいるが全員相続放棄をした結果として法定相続人がいなくなった場合などです。このような場合、被相続人の相続財産は法人とみなされます。そして、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の申立てにより、相続財産清算人を選任して、相続財産の処理手続を進めることができるようになっています。

相続財産清算人の申立てをするには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立書、法定相続人を証する戸籍謄本、被相続人の住民票除票または戸籍の附票、相続財産目録、財産を証する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し、負債に関する資料等)、利害関係を証する資料(戸籍謄本、後見登記事項証明書、金銭消費貸借契約書等)、印紙800円分、所定の郵便切手を提出します。郵便切手の金額は家庭裁判所ごとに異なります。審理の途中で官報公告料5,075円を納めることになります。その他、相続財産清算人への報酬相当額を予納するように求められる場合があります。

相続財産清算人が選任されるまでには約1か月かかります。相続財産清算人が選任されると相続財産清算人に対して選任審判書が送付されます。相続財産清算人の選任については不服申し立てが認められていません。家庭裁判所は、相続財産清算人を選任したときは、遅滞なく、相続財産清算人を選任した旨と、相続人があるならば一定期間内(この期間は6か月を下ることができません。)その権利を主張すべき旨を官報にて公告しなければなりません。

家庭裁判所による公告があったときは、相続財産清算人は、すべての相続債権者と受遺者に対し、2か月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨の公告を官報にてすることになります。この期間の満了後に、申出をした相続債権者その他相続財産清算人に知れている相続債権者と受遺者に対して弁済をします。家庭裁判所による公告の期間内に、相続人として権利を主張する者がいないときは、相続人、相続財産清算人に知られていない債権者、受遺者は、その権利を行使することができなくなります。この場合、被相続人と特別の縁故のあった者(特別縁故者といいます。)は、家庭裁判所による公告の期間満了後に、家庭裁判所に申立てをすることにより、清算後に残存した相続財産の全部または一部を承継することができます。

特別縁故者に承継されなかった相続財産は、国庫に帰属します。相続財産が国庫に引き渡しがなされたときに、相続財産法人はその目的を果たして消滅します。

なお、上記に述べたことは、選任の審判告知が令和5年4月1日以降における手続の流れです。法改正により、「相続財産管理人」が「相続財産清算人」に名称が変更となり、上記の手続における期間が短縮されています。

(司法書士・行政書士 三田佳央)