個人再生手続の流れ2

個人再生手続では、破産手続における破産管財人のような地位の者は置かれません。その代わり、個人再生委員という独自の手続機関が設けられています。これは、債務者の財産調査をしたり、債権の評価や再生計画の立案補助などをしたりします。

個人再生委員は、原則として、裁判所は、必要があると認めたときに、利害関係人の申立てか裁判所の職権により選任することができます。個人再生委員の選任の運用は、裁判所によって異なりますが、例えば、弁護士が申立代理人として関与している場合には、選任しないといった運用がなされています。ただ、例外的に、債権の評価の申立てがあった場合には、必ず選任しなければなりません。裁判所が債権の評価をする際には、個人再生委員の意見を聴かなければならないとされているからです。個人再生委員は、通常、弁護士が選任されますが、司法書士や調停委員が選任されるケースもあるようです。

個人再生委員の職務の内容としては、①債務者の財産や収入の状況を調査すること、②債権の評価に関して裁判所を補助すること、③債務者による適切な再生計画の作成のため必要な勧告をすることです。ただ、必ずしもこれらすべての職務をすることになるのではなく、裁判所が個人再生委員の選任の際に一つまたは二つ以上の職務を指定します。個人再生委員の負担を軽減し、その報酬を適正なものとして手続を廉価なものとするためです。

①の職務を指定された個人再生委員は、裁判所が定めた期間内に調査結果を報告しなければなりません。この場合、個人再生委員は、債務者に対して、その財産や収入の状況について報告を求めたり、帳簿や書類などを検査したりすることができます。債務者がこの求めに応じないときは、刑罰が科せられます。

②の職務を指定された個人再生委員は、裁判所に意見を述べることになります。この場合、債務者に対して、債権の存否や額などに関する資料の提出を求めることができます。この求めに応じない債務者は、過料に処せられます。

③の職務は、代理人がいない債務者が、適切な再生計画案を作成できるように配慮したものです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)