個人再生手続を利用することができる者とは

多重債務者が個人再生手続を利用するには、以下に述べる要件を満たしていなければなりません。まず、債務者が、「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある個人でなければなりません。将来の収入の見込みがある債務者は、保有する財産を処分して清算せずに、将来の収入から債務を返済することにより、破産手続よりも債権者に対して多く返済することができるため、破産手続によらずに簡易な再生手続を利用することができることとされています。ただ、定期的な収入を得る見込みまでは要求されていないので、定期的でなかったり、額の変動が小さくなかったりしても、継続的収入または反復的収入があれば足ります。そのため、サラリーマンでなくても、自営業者なども個人再生手続を利用することができます。

次に、債務者に対する債権の総額が5,000万円以下の場合に限られます。手続の影響を受ける債権者が場合であれば、費用対効果の観点から手続の簡略化をすることが正当であると考えられるからです。なお、この債権総額には、住宅資金貸付債権の額などは含まれません。このような債権は再生計画による減免の対象にはならないためです。そのため、多額の住宅ローンを抱えている債務者も、個人再生手続を利用することができます。

このような要件が満たされている場合において、債務者が個人再生手続を行うことを求めることにより、その手続が開始します。そのため、個人再生手続を利用する債務者は、再生手続開始の申立書に個人再生手続を行うことを求める旨を記載しなければなりません。そのため、個人再生手続を利用するには、手続開始の申立ての際にその旨を申述しなければならず、通常の再生手続が開始してから個人再生手続に移行することはできません。

(司法書士・行政書士 三田佳央)