遺言と死後事務

財産管理等委任契約や任意後見契約は、本人の死亡により終了します。そのため、受任者または任意後見人は、急迫の事情のあるときは、一定の死後事務を処理しなければなりません(例えば、電気・ガス・水道・電話の停止、国民健康保険・後期高齢者医療保険・介護保険の手続の停止と保険料の清算、年金の手続の停止などです。)が、急迫の事情のないときや、これらの事務以外の死後事務(例えば、入院費や施設利用料利用料の支払い、遺体の引き取り、火葬・葬儀に関する事務とその費用の支払い、居室の明け渡しなどです。)については、受任者または任意後見人に処理する義務がありません。

そのため、死後事務の内容を記載した遺言書を作成して、受任者または任意後見人を遺言執行者に指定しておくという方法が考えられます。しかし、遺言によって行うことができる事項は、法律で定められています(例えば、遺産分割方法の指定、推定相続人の廃除、未成年後見人の指定、認知などです。)。それ以外の事項については、遺言書の内容としていても法的な拘束力はなく、遺言執行者が指定されていたとしても、その者がそれらの事務を処理する義務を負うわけではありません。

そこで、遺言によって行うことができない事項については、死後事務を委任する契約を締結しておくことが、非常に有益な方法となります。死後事務委任契約を締結しておくことで、様々な費用の支払いや遺体の引き取りから火葬・葬儀の事務手続まで円滑に処理することができるようになります。死後事務委任契約の締結と併せて、遺言書を作成して遺言執行者を指定しておくことで、死後事務に必要な経費を捻出することができます。

このように、財産管理等委任契約や任意後見契約を締結する際には、遺言書の作成と死後事務委任契約の締結も、併せて行うことが望ましいといえるでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)