財産管理等委任契約における財産管理

受任者の財産管理の中心は、預貯金の管理と収入・支出に関する事務です。預貯金の管理についてどのような方法が良いかは一概にはいえないが、以下の点について留意すべきです。①本人に財産管理の方法を説明し、納得してもらうこと、②できるだけシンプルに財産管理の経過が分かるようにすること(例えば、管理する預貯金の口座を統合するなど)、③必要なときに速やかに動けるような体制をとっておくこと(例えば、受任者の住居の近くの金融機関に口座を開設して、速やかに預金を下ろせるようにするなど)などです。

財産管理等委任契約における受任者としての取引方法を定めている金融機関は少ないのが実情です。そのため、受任者が金融機関に委任契約書を提示して預金の解約を求めてもすぐに対応してくれないことが多いです。事前に金融機関にどのような手続きが必要なのかを確認しておくと良いでしょう。

このように、財産管理等委任契約の受任者(代理人)として金融機関で取引することが簡単ではないのが実情です。そのため、実務では、本人から預かった通帳とキャッシュカードを使って、預貯金の出し入れをしていることが多いです。また、信用金庫や地方銀行では、本人と取引が長年月に渡っており、かつ、以前から受任者のことを知っているような場合には、受任者が本人の通帳と印鑑を使って取引をすることがみとめられていることがあります。しかし、このような方法だけでは、受任者としての財産管理の不都合が解消されるわけではありません。速やかに、受任者としての取引方法を確立することが望ましいことは言うまでもありません。

なお、一部の大手銀行では、公正証書による財産管理等委任契約書と銀行が用意した代理届を提出しておけば、以後は代理人の名前と印鑑で取引ができるようになっているようです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)