財産管理等委任契約の締結2

財産管理等委任契約を締結するにあたっては、本人に対して、受任者は何をするのかということを、具体的に説明しておく必要があります。特に、身上監護については、受任者は、自ら介護などの事実行為をするのではなく、本人を代理して介護契約を締結したり、費用の支払いをしたりするなど、契約などの法律行為とそれに付随する事実行為を行うことになるという点は、誤解が生じないように説明する必要があるでしょう。

財産管理等委任契約を締結するにあたり、受任者が行う事務を「代理権目録」に記載して特定します。この場合、本人の判断能力は十分にあるはずなので、必要最小限度の事務を委任事項とすれば足りると考えられます。ただ、本人と受任者との間に信頼関係があるなら、将来必要と考えられるものについては、十分な話し合いをして理解をした上で、委任事項の内容とすることも考えられます。

どの財産を管理の対象とするかは、本人の希望をもとに話し合って決めることになりますが、通常、「預貯金・不動産・年金」というように財産の種類は特定しても、それ以上に具体的な特定をしないで契約がなされています。この場合に問題となるのは、①契約後に増加した財産の扱いと、②受託者が知らない財産の扱いです。①については、財産の種類によって扱いが異なります。例えば、預貯金であれば当然に管理財産として扱いますが、不動産の場合は、所在や状況によってどのように扱うかを判断することになります。②については、知らされない財産は管理できないことを本人に伝えて、本人にその財産を申告してもらって契約の内容に盛り込む必要があります。

財産管理等委任契約は任意後見契約と異なり、必ずしも公正証書で契約する必要はありません。しかし、本人が高齢者である場合などでは、公正証書により契約することが望ましいといえます。公証人によって本人の判断能力の状態を確認したり、契約の内容を理解していることや、その契約を締結する意思があることなどを確認することが期待できるからです。また、公正証書により契約しておく方が信用性が高く、取引が円滑に遂行できるのではないかと思われます。

(司法書士・行政書士 三田佳央)