財産管理等委任契約の締結1

財産管理等委任契約を締結するには、委任者である本人にその契約を締結するだけの判断能力が必要です。その判断能力の目安となるのは、以下のような点であるとされています。①本人が自分の財産を把握していて、受任者に説明できること(預貯金の金融機関や不動産の種類や場所など)、②本人が財産管理を委任ことの意味を理解していること(預金通帳を受任者に預けることなど)、③本人が財産管理の報告書を読んで理解し、そこに記載された内容を現存する財産や現実の収支と照合することができることです。本人がこのような判断能力を有しているかどうかは、一概には決められないため、財産管理の形態や内容、本人や関係者の意見を参考にして総合的に判断することになります。

本人の判断能力をどのようにして確認するかは難しい問題ですが、受任者として予定されている者が、直接本人と面会し、様々な角度から質問し直接本人に答えてもらいながら、自らその能力を確認することが必要です。医師の診断書がなければ安心できないような人については、委任契約による財産管理は避けた方がよく、この場合は、法定後見制度の利用について検討していくことになるでしょう。

高齢者の委任契約による財産管理においては、本人の判断能力とは別に、財産管理を委任したいという強い意思が必要であるといえます。高齢者の場合、周囲の勧めを断れずに、本人の真意に反して契約を締結してしまうことがあります。このようにして契約が締結されても、本人が受任者に対して不信感を持ってしまい、思うように財産管理を遂行することができないということになるでしょう。

高齢者が財産管理等委任契約を締結するにあたっては、本人のライフプランを確認しながら、本人が本当に財産管理を委任したいという気持ちがあるのかを、慎重に判断することが必要です。本人の状況を客観的に見ると、一刻も早く財産管理の委任が必要であるとしても、本人が乗り気ではない場合は、契約の締結は控えた方が良いでしょう。本人が自分の状況を客観的に見ることができない程度になっているときは、強引に委任契約による財産管理を勧めるのではなく、法定後見制度の利用を検討することになるでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)