公正証書による任意後見契約書の作成

任意後見契約書は、法務省令で定める様式の公正証書によって作成しなければなりません。通常の委任契約書は公正証書によって作成する必要はありませんが、任意後見契約書は下記の理由により、公正証書によって作成しなければならないとされています。

①公証人が関与することにより、本人の意思を確認して適法かつ有効な契約が締結されることを確保するとともに、契約の有効性を立証(公証役場による原本の保管等)することを可能にして紛争を未然に防ぐため。

②公正証書の作成を義務付けることにより、公証人による任意後見の登記を漏れなく行うことを可能にするため。

本人と任意後見受任者との間で、任意後見契約書の原案を作成したら、必要な付属書類とともに公証役場に持参し、公証人に任意後見契約公正証書の作成を依頼することになります。実際には、公証役場に持参する前に、メールかFAXで公証役場に任意後見契約書の原案を送付して内容をチェックしてもらうことになります。

公証人に任意後見契約公正証書の作成を依頼する場合の付属書類は、本人については、戸籍謄本・住民票・印鑑証明書・実印です。任意後見受任者については、住民票・印鑑証明書・実印です。この他に不動産の登記事項証明書などが必要になる場合もあります。印鑑証明書と実印は、本人確認するために必要であり、本人が公証役場に出頭する場合は、運転免許証などと認印をもって代えることができます。

公証役場では、本人は公証人と面接をします。その際に公証人は、本人の判断能力や契約を締結する意思を確認します。本人が公証役場への出頭が困難であれば、公証人が本人の居所に出張することもあります。

任意後見契約公正証書の作成手数料は、1契約につき11,000円となっています。この他、公証人が出張する場合は、日当と出張旅費が加算されることがあります。これ以外に、任意後見契約の登記の嘱託の手数料として1,400円、公正証書の正本・謄本代として1枚250円が加算されます。また、登記嘱託書に貼付する登記手数料として1件につき2,600円を予納することになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)