委任契約による財産管理は、自分の意思と責任で契約を締結するものであるため、高齢者や障害のある人たちの多様なニーズに対応できる内容とすることができます。
通常、想定される財産管理は、本人の預貯金・不動産・年金などの財産や収入の管理をして、必要な支払いなどを行います。財産に関する事務だけでなく、身上監護に関する事務も含まれます。
また、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」の一環としての「書類等の預かりサービス」や「日常的金銭管理サービス」があります。「書類等の預かりサービス」は、預貯金通帳・年金証書・印鑑・その他の書類の保管を委任するものです。「日常的金銭管理サービス」は、各種利用料の支払い・預貯金からの生活費の払戻しなど、日常の金銭管理を援助するものです。大きな財産の管理はこのサービスの対象外なので、それが必要になった場合には成年後見制度を利用することになります。
なお、通常の財産管理を委任する場合、財産管理監督人を置くこともできます。委任契約による財産管理は、通常、高齢者が利用する場合が多いことを考えると、財産管理人を監督することを内容とする契約も考えられます。ただ、それには監督人の人材、監督人への報酬といった問題があることを踏まえて検討する必要があります。
委任契約による財産管理は、本人の意思によりその内容を定めることができるので、財産管理の時期と形態も様々なパターンが考えられます。たとえば、①契約と同時に財産管理を開始する、②当事者が合意した日から開始する、③一定期間経過後、あるいは本人が一定年齢に達した日に開始する、④一定期間のみの財産管理、などです。このように、委任契約による財産管理は、本人のニーズに対応した財産管理を可能とすることができます。
(司法書士・行政書士 三田佳央)