成年後見人就任時の事務

後見開始の審判が確定して、成年後見人に就任したら、1か月以内に財産目録を作成して、家庭裁判所に提出しなければなりません。そのために、成年後見人は遅滞なく本人の財産の調査に着手しなければなりません。1か月の期間は財産調査に着手した時からです。実務では、成年後見人に就任すると、家庭裁判所から就任報告書が届いて、そこに報告期限が記載されているので、その期限までに報告書を家庭裁判所に提出することになります。

成年後見人に就任したら、本人から、預貯金通帳、現金、印鑑、登記済権利証その他の書類を預かります。金融機関で後見人の登録をするとともに、取引状況の照会をして、その金融機関における財産状況を確認します。本人から預かった請求書や領収書などから事前に把握していなかった預貯金の口座の情報が見つかったら、その金融機関にも取引状況の照会をします。登記済権利証などから不動産を所有していることが判明している場合には、法務局で登記事項証明書を取得したり、役場で固定資産評価証明書や名寄帳を取得したりして調査します。このような財産調査をして財産目録を作成するとともに、今後の収支を計算して収支予定表を作成することになります。

成年後見人は、財産目録の作成が終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有するだけです。そのため、速やかに財産の調査をして目録の作成をすることが重要です。急迫の必要がある行為とは、財産に関する行為のことをいい、身上監護に関する行為は含まれません。したがって、財産目録を作成する前であっても、入院手続きや入所契約をすることはできます。

そのほか、本人から預かった書類を精査して、それらの書類が成年後見人に届くようにするため、役場や関係機関に送付先変更の届出をします。

(司法書士・行政書士 三田佳央)