後見開始の審判と精神状況の鑑定

後見開始の審判をするには、本人の精神の状況につき鑑定をしなければなりません。ただし、明らかにその必要がないと認めるときはこの限りではありません。保佐開始の審判についても同様です。本人にとって制限の大きい後見と保佐については、家庭裁判所は、医師等の専門家の信頼性の高い鑑定資料を踏まえたうえで慎重に判断するためです。このため、本人が鑑定を拒否して鑑定ができない場合には、後見・保佐の審判はできないことになります。

実務では、診断書の記載内容や本人・申立人からの聴取などをもとに判断能力の判定ができると判断される場合には、鑑定は実施されません。実際に、鑑定が実施されているのは、全体の10%ほどです。鑑定が実施されると、1か月から2か月ほどの期間を要します。また、鑑定にかかる費用は3万円から10万円です。すなわち、鑑定が実施されると、審判が下りるまでに時間と費用がかかることになります。実務において、鑑定の実施件数が低いのは、このような事情に配慮しているのかもしれません。実務では、申立書と併せて鑑定連絡票を家庭裁判所に提出します。

補助開始の審判をするには、精神の状況につき医師その他適当な者の意見を聴かなければなりませんが、鑑定をする必要はありません。補助開始の審判について鑑定が不要となっているのは、補助類型は、本人には判断能力がある程度はあることから、本人の自己決定の尊重を図っても支障がないと考えられるからです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)