即効型の任意後見契約2

本人が軽度の認知症高齢者・知的障害・精神障害者である場合に、任意後見契約の締結を検討するときは、補助開始の申立ても選択肢に入れて検討しなければなりません。任意後見契約の内容が、本人に相応しいものであるか、本人が意欲しているのかなど、本人がきちんと判断することができない場合があるからです。この場合に、補助開始の申立てをすべきかの判断は、下記の項目を検討すべきあると考えられています。

① 本人に任意後見契約の締結に必要な意思能力があるのか。契約を締結する以上、意思能力が必要なのは当然ですが、補助開始の申立てをする意思能力よりも高度の意思能力を要すると考えられます。

② 本人は任意後見制度を理解しているのか。任意後見契約を締結することによって、自分が選んだ任意後見人に代理権が付与され、それに基づいて任意後見人が財産管理や身上監護の事務を行うこと、これらについて任意後見監督人が監督し家庭裁判所に報告すること、任意後見制度には同意権・取消権がないこと、法定後見制度へ移行する場合があることなどについて、おおよその理解が必要であると考えられます。

③ 本人が任意後見契約を締結したいという積極的意思を有しているのか。任意後見制度は契約によって任意後見人を選任し代理権を付与する制度であるため、自分が選んだ受任者と任意後見契約を締結したいという積極的な意思がなくてはならないと考えられます。

④ 本人が契約の内容に自分の希望を反映させる意思を持ち、積極的な検討を行ったか。任意後見契約に本人の希望が内容として反映させようとする姿勢とともに、実際に本人の希望が契約の内容として盛り込まれているのかを十分に検討することも必要であると考えられます。

補助類型においても、本人の自己決定を尊重する仕組みになっており、無理して任意後見契約を締結する必要はないのではないでしょうか。

(司法書士・行政書士 三田佳央)