即効型の任意後見契約1

即効型の任意後見契約とは、補助類型の対象となる者が任意後見契約を締結し、その後直ちに家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをすることを想定した利用形態です。軽度の認知症・知的障害・精神障害等にある補助類型の対象者(場合によっては保佐類型の対象者)でも、意思能力を有する限り、任意後見契約を締結することが可能であるため、即効型の任意後見契約を締結することができると考えられています。

即効型の任意後見契約のメリットとしては、本人の自己決定を尊重することができるという点にあると思われます。法定後見制度の一類型である補助開始の申立てをすると、補助人の選任は家庭裁判所の職権により行われることになり、代理権や同意権を付与することについても家庭裁判所が関与することになります。これに対し、任意後見契約を締結すると、任意後見受任者やその付与する代理権については契約の内容となるので、本人の意思を十分に反映させることができると思われます。

しかし、即効型では、本人の判断能力は補助類型に該当する程度に低下しているため、本人が自分にとって相応しい内容の契約であるか否かをきちんと判断できるとは限りません。また、本人が任意後見契約を締結することに対して十分な意欲があるかどうかも問題になります。本人の判断能力が十分でないため、本人に相応しくない契約や、本人が望んでいない契約が締結されてしまう懸念があります。補助類型の対象者が任意後見契約を締結することが可能であることと、任意後見契約を締結することが適切であるということとは、別次元の問題であると考える必要があります。

このように、本人が軽度の認知症高齢者・知的障害・精神障害者である場合は、任意後見契約の締結以外に、補助開始の申立ても選択肢に入れて検討しなければなりません。

(司法書士・行政書士 三田佳央)