成年後見開始の審判と代理権・同意権との関係

補助人に代理権や同意権を付与するには、代理権付与や同意権付与の申立てをする必要があります。補助類型においては、本人による自己決定を尊重するため、補助開始の審判によって当然に代理権や同意権が付与されるのではなく、申立てによって本人の保護に必要と考えられる範囲で代理権や同意権を付与する趣旨です。したがって、代理権と同意権を有する補助人、同意権のみを有する補助人だけでなく、代理権のみを有する補助人も認められることになる。しかし、代理権も同意権も有しない補助人は意味がないので、補助開始の審判は、代理権付与の審判か同意権付与の審判のどちらかと同時にすることになります。したがって、補助開始の申立てをするときは、必ず代理権付与・同意権付与のどちらか一方かまたは両方の申立てと同時にしなければなりません。

保佐人に代理権を付与するには、代理権付与の申立てをする必要がありますが、同意権は当然に付与されます。保佐類型では、本人の判断能力は補助類型よりも低下しているため、同意権は当然に付与されるものとしているのです。代理権の付与については、補助類型と同様の扱いです。実務では、保佐開始の申立てをする際には、必ず代理権付与の申立てもしています。本人保護を実効的なものにするためです。

成年後見人には、代理権は当然に付与されます。後見類型では、本人は判断能力を欠く常況にあるため、本人保護の実効性の観点から、成年後見人に包括的な代理権が付与されているのです。また、日常生活に関する行為以外の法律行為については、成年後見人に取消権が与えられており、本人が単独で行うことができません。

このように、各類型において、代理権と同意権の付与について異なることから、成年後見制度の利用を検討する際には、この違いを考慮しながら利用する類型を選択することが必要となるでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)