保佐類型と同意権

本人が、保佐人の同意を得ずにした一定の行為は、取り消すことができるとされています。本人は、判断能力が著しく不十分な者であるため、他人による支援が必要である状態であるからです。本人保護の観点から、保佐人の同意を要する重要な行為は、民法13条1項により具体的に列挙されています。列挙されている行為は下記の通りです。なお、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、同意権の対象から除外されています。自己決定を尊重する趣旨です。

①元本を領収し、または利用すること。貸付金の返済金を受領したり、利息付で金銭を貸し付けたりすることです。②借財または保証をすること。借金をしたり、保証人として保証債務を負担したりすることです。③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。不動産を売却したり、担保権を設定したりすることです。④訴訟行為をすること。民事訴訟法に、保佐人の同意を要しない訴訟行為についての特則が定められています(相手方の提起した訴えまたは上訴について訴訟行為をすること。)。⑤贈与、和解、仲裁合意をすること。贈与とは、第三者に贈与することをいい、贈与を受ける場合は含まれません。⑥相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること。⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。⑧新築、改築、増築、または大修繕をすること。不動産の新築等の請負契約をすることです。⑨短期賃貸借の期間を超える賃貸借をすること。短期賃貸借の期間は、民法602条に定められています(樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃貸借は10年、これ以外を目的とする土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年、動産の賃貸借は6か月。)。⑩以上に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。平成29年の民法改正により追加されました。

上記の行為以外の行為についても保佐人の同意を必要とする場合には、家庭裁判所に対し、保佐開始の申立てをすることができる者、保佐人、保佐監督人は、上記の行為以外の行為についても保佐人の同意権を付与する審判を請求することができます。家庭裁判所は、必要があると認めるときは、保佐人の同意権の範囲を拡張する旨の審判をすることになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)