株式会社を設立するには、発起人全員で、定款を作成する必要があります。定款を作成したら、発起人全員で署名するか記名押印をします。定款は、書面で作成するほか、電磁的記録をもって作成することができます。電磁的記録で作成する場合には、印紙代4万円が不要となりますが、署名や記名押印に代わる措置として電子署名をしなければなりません。発起人が作成する定款のことを、原子定款といいます。実務では、原子定款は、電磁的記録をもって作成することがほとんどです。
定款には、会社の組織や運営に関する基本的事項を定めます。定款に定める事項のうち、法律により必ず定めなければならないとされている事項があります。これを、絶対的記載事項といいます。絶対的記載事項の一つでも記載されていないと、定款自体が無効となります。絶対的記載事項としては、①目的、②商号、③本店の所在地、④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、⑤発起人の氏名・名称、住所、⑥株式会社が発行することができる株式の総数(これを「発行可能株式総数」といいます。)があります。
①の目的とは、株式会社で営む事業のことです。実務では、株式会社として営む可能性のある事業をなるべく記載することが多いです。株式会社が特定の事業を営むには、その事業が定款の目的として記載されていなければならないので、定款の目的に記載されていないと、定款を変更して目的を変更する登記手続きをしなければならなず、手間とコストがかかるからです。
②の商号とは、社名のことです。登記実務で使用できない文字等があるため、希望する商号が登記することができるのか、事前に確認しておく必要があります。
③の本店の所在地とは、独立の最小行政区画、すなわち市町村(東京23区については区)のことです。市町村だけでなく番地まで記載することも可能ですが、実務では、市町村のみを記載することがほとんどです。市町村のみの記載であれば、同じ市町村内で本店を移転しても、定款を変更する必要がないからです(本店移転の登記手続きはしなければなりません。)。
④の設立に際して出資した財産の価額が、株式会社の資本金の額となります。
⑤の発起人の氏名・名称、住所は、氏名だけでなく名称も記載事項としているのは、発起人が法人であることを想定しているからです。実際にも、株式会社が発起人となって別の株式会社を子会社として設立することがあります。
⑥この他、発起人は発行可能株式総数を定款で定めなければなりません。ただ、原子定款で定める必要はなく、株式会社の成立の時までに、発起人全員の同意によって、定款を変更して定めればよいのです。
(司法書士・行政書士 三田佳央)