家族信託とは7

受益者とは、受益権を有する者のことです。受益権とは、信託行為に基づく財産的利益の給付を確保するために、受託者に対して一定の行為を求めることができる権利のことをいいます。信託行為の定めにより受益者となるべき者として指定された者は、当然に受益権を取得します。受益者となるべき者の承諾等の意思表示は必要ありません。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めによることになります。受託者は、受益者として指定された者がその事実を知らないときは、遅滞なくその旨を通知しなければなりません。受益者の権利行使の機会を確保するためです。

現行の信託法の規定によると、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託を設定することができます。例えば、委託者Aが生存中は委託者Aが受益者となるが、委託者Aの死亡後は第一受益者Bを、Bの死亡後はCを第二受益者を受益者とする信託のことです。ただし、このような信託は、設定から30年を経過した時以後に現に存する受益者が死亡するまで、または当該受益権が消滅するまでの間のみ有効であるとされています。あまりに長期に連続受益者を指定することは、公序良俗に反するのではないかとの問題が考えられるためです。

受託者が単独で行使することができる権利のうち、一定の権利は信託行為により制限することが認められていません。これらの権利は受益者が受託者を監督するために必要な権利だからです。信託は受益者のための制度であることの現れといえるでしょう。

受益権は譲渡することができるのが原則ですが、信託行為により制限することができます。受益権の質入れについても同様です。受益者は、受益権を放棄することができます。ただし、受益者が信託行為の当事者である場合はできません。受益権の放棄は、受託者に対して受益権を放棄する旨の意思表示をしてすることになります。受益権を放棄すると、当初から受益権を有していなかったものとみなされます。したがって、その受益権を放棄した者は、放棄の時点までに受けた利益については不当利得により返還しなければならないことになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)