家族信託とは6

受託者は、委託者から信託財産に関する所有権とその名義の移転を受けるとともに、委託者によって設定された信託目的に従って、この信託財産の管理・処分する義務を負うことになります。受託者は、他人の財産管理人として信託事務を遂行する重要な役割を負う地位にあるといえます。そのため、信託法には受託者の活動を規制するための規定が多く設けられています。受託者の義務としては、信託事務遂行義務の他に、①善管注意義務、②信託事務の処理の委託における第三者の選任・監督に関する義務、③忠実義務、④公平義務、⑤分別管理義務、⑥帳簿作成・報告義務があります。このように、受託者は重要な役割を負っているため、未成年者を受託者とすることはできません。

一定の事由が発生することによって受託者の任務は終了します。①受託者の死亡、②受託者が後見開始または保佐開始の審判を受けたこと、③受託者が破産手続開始決定を受けたこと、④信託行為において定めた事由、などです。信託行為に新たな受託者に関する定めがないときは、委託者と受益者の合意により新しい受託者を選任することになります。利害関係人の申立てにより、裁判所が新しい受託者を選任することもあります。新しい受託者が就任したときは、従前の受託者から新しい受託者に信託に関する権利義務が承継されます。

受託者が数人いるときは、信託財産はその合有となるものとされています。すなわち、①共同受託者はそれぞれ信託財産に対して持分を有さない、②信託財産の分割を請求したり持分を譲渡したりすることができない、ということです。受託者は信託財産に対して固有の利益を持たないから、受託者が複数の場合の信託財産の所有状態を民法上の共有と同様に扱うことができないためです。

(司法書士・行政書士 三田佳央)