家族信託とは11

家族信託は、委託者の財産について、受託者が、受益者のために管理・処分することによって、信託目的を達成しようとするものです。そのため、家族信託では、受託者に、委託者の死後事務に関する権限を与えることができません。委託者の死後事務とは、例えば、死亡に関する役所での手続き、葬儀・火葬に関する手続きや費用の支払い、年金手続き、その他委託者が死亡したことにより生ずる各種手続きなどです。委託者の財産管理だけでなく、死後事務についても支援をするには、家族信託と死後事務委任契約を併用することが有用であると考えられます。

死後事務委任契約とは、本人の死後における様々な事務処理を第三者に委託する契約のことです。民法の規定によると、委任契約は、委託者の死亡により終了することになっているが、最高裁の判例は、当事者間の合意により、委任契約の効力を、委任者の死後においても存続させることができるとしています。上記規定は、委任契約は、当事者間の信頼関係の上に成り立っているところ、当事者間の合意により、この規定とは異なる特約を定めることは許されるものだからです。

家族信託おける受託者を、死後事務委任契約の受任者とすることにより、信頼できる者に、死後の財産管理・処分だけでなく、葬儀・火葬を含む様々な事務処理を委託することができるようになります。それだけでなく、受託者が管理している委託者の財産を、死後事務を処理する際に発生する費用の支払いなどに活用することができます。例えば、葬儀・火葬の費用の支払いなどです。このような方法は、特に、身寄りのない方において、その死後における希望(葬儀の様式等)を実現したり、死後事務を円滑に処理するには、非常に有用な方法であるといえるでしょう。

(司法書士・行政書士 三田佳央)