家族信託とは10

家族信託は、受託者が、受益者のために、委託者の財産を管理・処分することはできますが、福祉関係等の身上監護に関する権限を、受託者に認めることはできません。そのため、家族信託だけでは、受託者が管理している財産やその財産を処分したことにより得られた金銭等の財産を、委託者の身上監護に有効に活用することが困難といえます。そこで、財産管理だけでなく身上監護に関する支援をするために、家族信託と任意後見を併用する方法が有用であると考えられます。

任意後見とは、本人が認知症などになったときに備えて、信頼できる者に後見人になってもらう旨の契約を締結することです。この任意後見の契約を締結すると、認知症などにより判断能力が低下したときに、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをして、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した段階で、任意後見契約の効力は発動されて、その契約で定めたとおりに、任意後見人が本人のために代理人として事務を遂行することができるようになります。任意後見人には、任意後見契約で定められた代理権が付与されます。財産管理や身上監護に関する事項について自由に定めることができます。

家族信託と任意後見を併用する場合には、家族信託では対応することができない事項について、任意後見契約で任意後見人に代理権を付与することによって、家族信託での財産管理を受益者のために有効活用することができるようになります。

(司法書士・行政書士 三田佳央)