家族信託とは13

家族信託を利用する上で注意しなければならないのが、課税との関係です。家族信託においては、税制上の優遇はありません。信託において、課税の対象とされるのは、受益者です。したがって、委託者兼受託者という内容の信託であれば、たとえ受託者に所有権の登記名義人が変更されていたとしても、その実質は変更されていないので、課税されることはありません。しかし、委託者A、受託者B、受益者Cとする信託の場合は、受益者Cに課税されることになります。

また、信託行為の内容によっては、信託を利用しなければ課税されなかったのに、課税されてしまうことがあります。例えば、不動産の登記名義人が死亡して、遺産である不動産について相続登記により相続人に登記名義人を変更(移転)したとしても、その相続人に不動産取得税が課税されることはありません。しかし、信託を委託者の死亡により終了させるものとしていた場合に、信託財産である不動産について、相続人である帰属権利者に取得させるものとしていたとしても、その帰属権利者に不動産取得税が課税されてしまうことがあります。この場合において、課税されないようにするには、信託行為が効力を生じたときから委託者兼受託者であって、帰属権利者が委託者の相続人であり、かつ、信託行為の内容として、「委託者の地位は相続により承継せず、残余財産の帰属権利者が取得する。なお、当初委託者の権利は消滅する。」と定めておく必要があります。信託財産とされた財産は、相続により承継されませんので、たとえ信託行為の内容として委託者の相続人に承継させるものとしていたとしても、相続とは異なる新たな権利承継があったものとみなされるからです。

このように、家族信託を利用するときは、課税という問題を併せて検討しておく必要があります。家族信託の利用を検討される際には、弁護士、司法書士だけでなく、税理士にも相談されることをお勧めします。

(司法書士・行政書士 三田佳央)