家族信託とは1

Aが、その所有する甲土地を、Cに利益を得させるために、Bに引き渡して管理や処分をさせる制度のことを、信託といいます。この場合の、Aを委託者、Bを受託者、Cを受益者、甲土地を信託財産といいます。受託者の果たす役割が信託財産の管理・保全または処分である場合を民事信託といい、それを超える場合やそれとは異なる場合を商事信託といいます。商事信託は信託銀行などが扱っています。民事信託を家族の利益のために活用する場合を家族信託(家族のための民事信託)といいます。上記の例で、BがAとCの子であるときは、子が親のために受託者として甲土地を管理・処分することになり、これは、家族信託にあたります。家族信託は、家族の利益のために、自己の財産を信頼する第三者に託して、管理や処分などをしてもらう制度であるということができます。

では、Aは甲土地をBを受託者として信託することに、どんなメリットがあるのでしょうか。例えば、Aが将来認知症になると、判断能力が低下してしまうため、甲土地を売却したいと考えても売却できなくなってしまいます。判断能力のない者の契約は無効だからです。しかし、上記のように、Bを受託者として甲土地を信託しておくと、仮にAが認知症になって判断能力が低下しても、甲土地を売却することができます。Bが受託者として甲土地を売却することになるからです。このように、認知症対策として家族信託が注目されています。

家族信託は、様々な用途に活用できる手段としての可能性がありますが、その仕組みが複雑難解で、使い方を誤るとかえって不利益を生じてしまうこともあります。家族信託を検討される際には、是非とも、弁護士や司法書士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

(司法書士・行政書士 三田佳央)