成年後見制度には、補助、保佐、後見の3つの類型があります。判断能力が低下した本人がどの類型に該当するのかは、最終的には家庭裁判所が判断します。ただ、家庭裁判所に成年後見制度開始の申立手続をする際には、どの類型の開始申立てをするのかを明らかにしなければなりません。では、どのようにして本人がどの類型に該当するのかを判断するかといいますと、「成年後見制度用の診断書」の記載をもとに判断します。この診断書には、本人に関する認知機能検査の結果や認知機能についての意見等が記載されていますが、特に重要な記載となるのが、「判断能力についての意見」についての記載です。ここには、判断能力に問題なし、補助相当、保佐相当、後見相当のいずれかを選択して記載されており、この記載をもとにどの類型の開始申立てをするのかを決定します。
この診断書は、かかりつけ医がいればその医師に作成してもらうのが良いですが、専門外で作成できない医師もおります。その場合には、精神科の医師に作成を依頼することになります。ただ、実際には、どの類型に該当するのかという判断をするには難しいケースが少なくありません。例えば、保佐相当とも後見相当とも受け取れるような場合や、精神状態が不安定で正確な認知機能検査を実施することが困難な場合などです。保佐相当であっても、補助に近い判断能力であることもあれば、後見に近い判断能力であることもあります。後見相当であっても、保佐に近い判断能力であることもあれば、自分のことがほとんど認識・判断できない判断能力であることもあります。つまり、判断能力の程度には様々な状態があります。
しかしながら、保佐人の同意権(取消権)や、成年後見人の代理権や取消権は、法律上、画一的なものとして規定されており、本人の状況に見合った扱いをすることが難しい制度設計となっているのが現状です。このような状況を解消して、本人の状況に見合った支援を可能とするためには、補助、保佐、後見という3つの類型を一元化して、本人の状況に応じて同意権や代理権を設定するような制度にしていくことが良いのではないかと思われます。