成年後見制度を利用するきっかけ3

認知症等により判断能力が低下している人に成年後見人が付いていないと、手続きができないことがあります。例えば、相続が発生したが相続人に認知症の人がいる場合の相続手続き、不動産を売却したいが所有者が認知症になっている場合の不動産の売却手続き、などです。

このようなケースでは、たとえ遺産分割協議をしたり、不動産を売却する手続きをしたとしても、それらの行為は法律上無効なものとして扱われます。つまり、相続人は遺産分割協議によって取得した権利を主張することができませんし、買主は不動産を取得することができません。自己の行為の結果を判断する精神的能力(意思能力)を持たない人がした契約等の法律行為は無効だからです。

ただ、このようなケースで成年後見人を付けた場合には、相続手続きや不動産の売却が終わっても、成年後見人が付いたままであるという点に注意が必要です。成年後見人が辞任するには、家庭裁判所の許可を得る必要がありますが、一度成年後見人が付くと、正当な事由がない限り、家庭裁判所による辞任の許可を得ることができません。

そのため、このようなケースで成年後見制度の利用を検討するときには、相続手続きや不動産の売却手続きが完了した後のことも考慮する必要があります。